Research Abstract |
使用した澱粉は, トウモロコシ, モチトウモロコシ, コメ, モチゴメ, ジャガイモ, サツマイモ, ジャガイモで, ジャガイモは水洗いし, 他の5種は脱脂した. 水溶性蛋白質は, 主としてカゼインを用いた. 1.高感度示差走査熱量計による糊化熱は, カゼインやアルブミンの添加によって, モチトウモロコシ, コメ, モチゴメを除き, 10%以上上昇した. 糊化温度は, トウモロコシで少し高くなった以外, 変化は見られなかった. 2.膨潤度の精確な測定を試みたところ, トウモコシは65〜75°Cで, コメ, ジャガイモでは65〜95°Cで, サツマイモでは75〜95°Cでカゼイン添加による膨潤抑制が見られていたが, モチトウモロコシとモチゴメには認められなかった. 3.1°C/分で昇温時の粘度を測定した結果, および1と2より, アミロースを含む澱粉に対する蛋白質添加の影響が大きいことが示され, これには熱糊化の初期に澱粉粒から溶出する成分の関与が予測された. そこで, トウモロコシとモチトウモロコシの澱粉を60°Cまで加温し, その時溶出した成分を分取して性質を調べ, 一方で60°C処理した澱粉を用いて粘度図形等を検討した. 4.60°C処理によって溶出した糖は, トウモロコシ0.24%, モチトウモロコシ0.11%であり, 前者は1還元末端基当り平均33, 後者は平均55のブドウ糖を持っていた. また, 後者は分枝成分を含んでいた. 5.60°C処理トウモロコシ澱粉では, カゼイン添加による粘度上昇開始の遅れが見られなくなり, 粘度低下率が約1/2に縮少された. 60°C処理モチトウモロコシ澱粉では, カゼイン添加時のブレークダウンがやや大きくなった以外変化は認められなかった. これらのことは, カゼインと低分子のアミロースの相互作用が, アミロースを含む澱粉の熱糊化挙動に影響していることを示唆していると考えられる. この点については, 今後さらに検討を続ける予定である.
|