Research Abstract |
本年度は, 主として1)老化の指標としての体力年齢の推定式のモデルの検討, 2)運動適性テストにもとづく体力年齢の推定式の作成, 等について研究を行った. 老化を測る尺度としては, 現在迄のところ, 生物学的年齢がよく用いられる. そしてその推定に当っては, 重回帰モデルを用いたものが多い. しかし, この方法は理論的に, 又統計的にみて種々の問題を持つ. そこで我々は, 重回帰モデルに代って主成分分析を用いた統計モデルを提案してきた. しかし, この方法も又, 加齢変化をどのように反映するかという点で, その説明に説得力を欠く. 本研究では, 主成分モデルのこの弱点を除去し, より妥当性の高いものとするため, 次の検討を試みた. 因子分析をヒトの種々の生理機能を代表する30項目の生理的測定値と暦年齢から求められた相関行列に適用した. その結果, 12の主成分が得られた. これらの内, 第1主成分は, 暦年齢と0.79の高い因子負荷量を, また20の生理的変数と比較的高い因子負荷量を示した. 第2〜12の主成分は, 暦年齢とほとんど相関が認められず, かつ2〜3の組織・器官を代表する変数とのみ高い因子負荷量を示した. これらの結果から, 第1主成分はPrimary Aging Factor, 第2〜12の主成分はSecondary Aging Factorと解釈された. 従って, 第1主成分にもとづく生理的年齢の推定は, 個人の加齢変化をよく反映する. そして, このモデルを用いて体力年齢を推定することは妥当性があると考えられる. 健康な女子中高年者348名に, 肺活量(X_1), 垂直跳(X_2), 背筋力(X_3), 反復横跳び(X_4), 握力(X_5), 立位体前屈(X_6), 閉眼片足立ち(X_7)の7項目の体力測定を実施した. そして得られたデータに, 主成分分析の統計モデルを適用して, 次の体力年齢(FA)の推定式を求め得た. FA=12X(5.37-0.0004X_1-0.03X_2-0.011X_3-0.03X_4-0.039X_5-0.017X_6-0.005X_7)+5.37.
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