1987 Fiscal Year Annual Research Report
マクロファージのFcレセプター介在性貧食能誘導における糖鎖の役割
Project/Area Number |
62580109
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高崎 誠一 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (80112093)
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Keywords | 貧食能誘導 / マクロファージ系細胞 / Fcレセプター / アスパラギン結合型糖鎖 / プロセシング |
Research Abstract |
マウスのマクロファージ様細胞株(P388D_1)はFcレセプターを発現しており, 抗原・抗体複合体の抗体上のFc部分を認識してこれを結合することができる. しかし, 結合した複合体を更に貧食する能力は欠いている. 我々はこの貧食能がP388D_1細胞をDMSO存在下で培養することにより誘導されることを見出している. DMSOはマクロファージ系細胞の分化誘導剤として知られ, 糖タンパク質糖鎖に構造変化をひき起こすことから, 糖鎖の構造変化とマクロファージ系細胞の特異機能発現との関連性に注目し, 本研究では作用特異性の明確な糖鎖生合成阻害剤を用いて貧食能誘導における糖鎖の役割を探ることにした. 本年度は, アスパラギン結合型糖鎖のプロセシングの過程を阻害する薬剤の影響を検討し, 以下の知見を得た. α-グルコシダーゼの阻害剤であるカスタノスペルミンの存在下でP388D_1細胞を培養したところ, 濃度及び時間依存的にFcレセプター介在性の貧食能が誘導されることが認められた. 又, α-マンノシダーゼIの阻害剤であるスワインソニン存在下で培養した時にも, 同様に貧食能の誘導が観察された. これら2種の薬剤は作用点が異なるが, いずれも高マンノース型糖鎖から複合型糖鎖へのプロセシングを阻害する点で共通している. 一方, P388D_1細胞の膜に発現されているアスパラギン結合型糖鎖の構造解析から, 約24%が高マンノース型糖鎖で残りがN-アセチルラクトサミンの繰り返し構造を含む4本鎖を主要成分とする複合型糖鎖であることが判明した. 従って, これら複合型糖鎖が薬剤処理によって発現されず, 高マンノース型としてとどまっていることが貧食能の誘導に深く関与しているものと予想された. 現在, 薬剤処理による構造変化の実体の確認, 及び薬剤処理によって新たに高マンノース型糖鎖を発現するようになった膜糖タンパク質の同定並びにFcレセプターとの関連性を解析している.
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