1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62580109
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Research Institution | the University of Tokyo |
Principal Investigator |
高崎 誠一 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (80112093)
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Keywords | プロセシング阻害剤 / 高マンノース型糖鎖 / 貧食能誘導 / Fcレセプター |
Research Abstract |
マウスのマクロファージ様細胞株P388D1は、抗原と結合した抗体(IgG)のFc部分を認識するレセプターを発現しているにもかかわらず、抗原・抗体複合体を細胞内に取り込むことができない。しかし、初年度に明らかにしたようにアスパラギン結合糖鎖のプロセシング阻害剤であるスワインソニンやカスタノスペルミンを培地中に添加し細胞を培養すると、貧食能の誘導が見られる。阻害剤の作用特異性から、高マンノース型から複合型糖鎖へのプロセシング阻害がこの現象の背景にあるものと予想された。貧食能の誘導はDMSOの添加によっても見られることから、この場合にもプロセシング阻害が関与しているか否かを調べるために、DMSO誘導前後で糖鎖の構造を比較解析した。その結果、誘導に伴って高マンノース型糖鎖が36%から50%に有為に増加し、3本鎖、4本鎖を骨格とする複合型糖鎖が減少することが判明した。又、細胞のNP-40可溶化物をSDS-PAGEで解析したところ、タンパク質では差が認められないのに対し、コンカナバリンAを用いたレクチン染色では30kDa以上の分子量を持つ糖タンパク質の染色度の増加が誘導後に見られた。従って、特定の糖タンパク質に高マンノース型糖鎖が発現されることが貧食能誘導の誘因と考えられた。スワインソニンを貧食能誘導に用いた場合には、チミジンやロイシンの酸不溶性画分への取り込みは影響を受けないのに対し、グルコサミンの取り込みの減少が認められること、またラテックスビーズをとりこむ非特異的貧食能の増強や補体レセプター介在性貧食能の誘導は認められないこと等が明らかとなった。以上の結果は、アスパラギン結合糖鎖のプロセシング阻害による高マンノース型糖鎖の発現が他の貧食には影響を与えず、Fcレセプターを介する貧食能のみを特異的に誘導する上で、極めて重要な役割を果たしていることを示唆する。
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