1987 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギーリン酸結合としてのタンパク質中のチロシンリン酸の研究
Project/Area Number |
62580150
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
深見 泰夫 神戸大学, 理学部, 助手 (00156746)
|
Keywords | タンパク質リン酸化 / チロシンリン酸 / 高エネルギーリン酸結合 |
Research Abstract |
ラウス肉腫ウイルスのsrc遺伝子産物(p60^<v-src>)や, 増殖因子であるEGFやインスリンの受容体は, チロシン残基に特異的なタンパク質リン酸化酵素活性をもっており, これらの酵素による細胞内タンパク質のチロシンリン酸化が, 細胞増殖やがん化に重要な働きをしていると考えられている. しかしながら, チロシンリン酸化が従来よりよく知られているセリンやスレオニンのリン酸化とどのように異なっているのかについてはよくわかっていない. 本研究では, タンパク質中のチロシンリン酸が高エネルギーリン酸エステルの性質を持っている点に着目し, リン酸化されたタンパク質から別のタンパク質へリン酸基が移るリン酸基転移反応について解析を行った. チロシンリン酸化酵素としては, p60^<v-src>をマウスがん細胞(SR-CDF_1)から調製し, 基質としては, ヒト表皮ケラチン及びウサギ骨格筋アクチンを用いた. すでに予備的実験から, リン酸したケラチンと抗ケラチン抗体を混合することによって抗体分子へリン酸基の一部が移ることがわかっていたが, 今回この実験の条件を検討すると共に, リン酸基がIgG重鎖のチロシン残基に転移していることを確認した. . この結果は, タンパク質中のチロシン残基間でリン酸基の交換反応が起こり得ることを示している. 一方, アクチンをセファロース粒子に結合させた後リン酸化したものをリン酸基供与体として用い, アクチンと特異的に結合するDNaseIや, 新たに加えた非リン酸化アクチンへのリン酸基転移反応を調べたが, 試みた条件下では転移反応は認められなかった. しかしながら, 現在の実験条件下ではアクチンは重合してしまっており, 今後反応条件を工夫する必要があると思われる. さらに, チロシンからセリン, スレオニンへのリン酸基転移の可能性についても調べる必要があるが, リン酸基供与体と受容体の組合せに何を選ぶかというもっとも困難な点が課題として残されている.
|
-
[Publications] Akiyama, T.: J. Biol. Chem.262. (5592-5595)
-
[Publications] 深見泰夫: 実験医学. 5. 594-598 (1987)
-
[Publications] 深見泰夫: 生物物理. 27. 234-236 (1987)