1987 Fiscal Year Annual Research Report
アデニレートキナーゼのミトコンドリアへの局在化機構
Project/Area Number |
62580152
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
岸 文雄 山口大学, 医学部付属病院, 助手 (40153077)
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Keywords | アデニレートキナーゼ / ミトコンドリア / アイソザイム / cDNA / 膜輸送 / SPbプロモーター |
Research Abstract |
アデニトレートキナーゼには, 組織特異性及び細胞内局在の異なる細胞質型(筋型)とミトコンドリア型(肝型)の2種類のアイソザイムが存在する. 既に申請者は, 両アイソザイムのCDNAをクローニングし, その塩基配列を決定した. その結果, 後者はミトコンドリア膜間腔に存在するにもかかわらずミトコンドリアへの転位の為のシグナルとなるプレアミノ酸配列を持たないことがわかった. この特異な膜輸送機構を明らかにするために, 本年度はin vitroの輸送系を確立した. 1.λgtllベクターにクローセン化してある牛ミトコンドリア型アデニレートキナーゼcDNAを制御酵素で切断し, trcプロモーターの下流に挿入して発現プラスミドを作製した. この実験において大腸菌の培養のために62年度に申請した振とう培養機を購入し使用した. 2.上記発現プラスミドを鋳型にして, 大腸菌のZubayの無細胞蛋白合成系を利用して, 本酵素系の合成をin vitroで試みた. しかしこの系では本酵素の合成量が極めて少なかった. 3.アデニレートキナーゼcDNAをSP6プロモーターの下流につなぎ, in vitroで十分量のmRNAを合成した. 次に, このmRNAを鋳型にしてウサギ網状赤血球抽出液を利用して, in vitroで蛋白合成をしたところ, 十分量の本酵素蛋白が合成できた. 4.単離したラット肝ミトコンドリアとin vitroで合成した本酵素をインキュベートし, 本酵素のミトコンドリア結合能を調べたところ, 本酵素はミトコンドリアに50%以上結合していた. 一方, 細胞型アデニレートキナーゼは同様の実験を行ってもミトコンドリアに結合しなかった. ミトコンドリアに結合した本酵素の分子量は, in vitroで合成したものと同じであったことから, 転位過程においてプロテアーゼによる切断は起っていないことが明らかになった. 今後, 本酵素の欠失変異体やアミノ酸変異体を作成して, ミトコンドリアへの転位に必要な領域を特定しようと考えている.
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