Research Abstract |
原爆爆心地より500m地点にある中央郵便局において被爆した90名の進徳女学校生徒について原爆直後より昭和60年までの経過について種々の記録をもとに調査を行い, 30名の生存者を確認したが, 本年度は当時の進徳女学校生徒と, 当時の郵便局職員について末梢血リンパ球の染色体変化について検討を行った. 検査可能であったのは女学校生徒3名, 郵便局職員7名である. 各人より10mlの末梢血を採血し, リンパ球を分離後, 48時間培養し, 1例につき50〜100個の分裂細胞について染色体異常の有無を観察した. 染色体異常から計算された女学校生徒の推定被爆線量はそれぞれ549, 649, 740ラドであり, 物理的計算法によるT65D値はそれぞれ, 986, 667, 638ラドであった. また, 郵便局職員の染色体異常率からの推定線量は85, 133, 152, 172, 214, 252, 341であり, T65D値はそれぞれ103, 538, 363, 152, 357, 120, 267ラドであった. いずれのグループでも染色体異常からの推定被曝線量とT65D値はほぼ並行した値が得られ, これらの値には客観性があるものと判断された. 郵便局職員は主に1階で被爆しており, 十分な遮蔽があったものと思われる. 一方, 女学校生徒は2階の窓側で被爆しており, 女学校生徒グループの被爆線量が高く計算されている. 女学校生徒の追跡調査・染色体検査が今後も必要であることは明らかであるが, これまでの研究からはLD50線量は500ラドは下らないと考えられる. 最近, 菌のエメナル質の放射活性より被爆放射線量を推定(ESR)する方法も開発されてきており, これら対象者の協力を得て, より精度の高い推定被爆線量ひいてはヒトのLD50線量を追求していく予定である.
|