Research Abstract |
短寿命核種の分離装置として, 電気伝導度検出器, 紫外検出器, 放射能検出器を兼備えた放射能イオンクロマトグラフ装置を開発し, 原子炉中性子の照射により生じた高比放射能ハロゲンの分離に適用した. 分離に用いた試料は, ハロゲンの酸素化合物であり, 中性子照射の結果生じた高比放射能ハロゲンは, 酸素のないハロゲンか親物質より低次の酸素化合物であった. 核反応により生じた反応生成物は, 照射に用いた物質量に比して, 著しく微量でかつ親物質と異なった化学種として存在する場合が多く, しかも不安定である. したがって, 短時間内に分離を終えないかぎり, イオン種や比放射能の情報は得られない. そのため溶離液の流速を1.2ml/minで実験を行い, 15分以内の分離を心がけた. 溶離液は5mMの安息香酸カリウム(pH6)が, ハロゲンの各種イオン種の分離には最適であった. この条件下では, ヨウ素については, ヨウ素酸イオンとヨウ素イオン, 臭素については, 臭素酸イオンと臭素イオン, 塩素については, 過塩素酸イオン, 塩素酸イオン, 塩素イオンとがそれぞれ分離検出された. 放射能検出器では, これらのハロゲン元素はいづれも約10万〜100万個の放射性原子の数が容易に検出されたことより, 極低濃度領域におけるハロゲン原子の挙動について検討することができた. その比放射能については, 電気伝導度検出器の検出限界が0.1ppm程度であるから, 計算により10^3Ci/g以上のものが分離分取できた. これは, 非化学分離の際に得られる放射性ハロゲンの比放射能と比べ, 1万倍以上濃縮された高比放射能のハロゲンが得られたこととなった. ウランの中性子による核分裂の結果生じた核分裂生成ヨウ素についての分離実験では, 不安定なイオン種(次亜ヨウ素酸, 亜ヨウ素酸イオン, 多原子イオン種等と思われる)が存在することも判明したが, 過臭素酸イオンの存在は認められなかった.
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