Research Abstract |
本年度は上記の研究テーマのもとで, 全国の市町村のうち, 林野率が70%以上の市町村をすべて対象とし, 資源量(森林), 造林面積, 人工林面積比率, 林野利用の変化, 林家数, 人口など, 林業にかかわるデータを収集し, 10〜20年間におけるそれらの変化をみるとともに, そこから判明した地域類型を設定し, その上でそれらを裏付けるために, 北海道, 北陸, 東海, 近畿, 中国, 北九州の一部地域で現地調査を行った. その結果, (1)林業不況下においても若干の地域類型が見出されること, その地域類型は, マクロにみれば, 育成林業地域の形成過程にみられる地域類型に対応し, とくに戦後, 後発型として成立した新興の育林地域において林業不況の影響がより直接的にあらわれていること, それに対して, 明治期に前に成立した育林地では, 木材生産と造林レベルはかなり縮小したが, 再生産活動が絶えたわけではなく, 存立基盤は存在する. このような地域差の背景には, 流通機構の機能が確立しているかどうかといった流通メカニズムの有無が大きい. (2)新興育林地域においては, いちじるしい人口減少と高齢化の中で, 将来の「社会的空白地域」が確実になると考えられる地域が多くみられ, このような地域の森林資源の存在形態をあらためて検討することが課題になる. (3)一方, 不況の中で積極的に育林と再生産活動をめざす地域もいくつかみられる. その代表例は, 熊本県小国町や球磨村であり, その背景には森林組合の活動との密接な関係がみられる. (4)以上の中で, 間伐材をどうすすめているかという点が, 育林地域の現段階の方向性を確認する上で, 重要なメルクマールになりうることもわかった. この点も次年度における当研究の一つの柱として課題にしたい.
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