1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62580199
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
森 和紀 三重大学, 教育学部, 教授 (60024494)
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Keywords | 地下水 / 水質形成 / 滞留時間 / 自噴帯 |
Research Abstract |
本研究の最終年度(第3年次)にあたる平成元年度においては、伊勢平野北部の第三紀丘陵部を主な調査対象地域として、自噴井(深度40m〜180m)から得られる被圧地下水の水温・水質の季節変化を明らかにした。とくに水質に関しては、溶存成分の一般項目(Na^+・K^+・Ca^<2+>Mg^<2+>・Cl^ー・SO_4^<2ー>・HCO_3^ー)の分析に加えて、トリチウム濃度の測定を6ケ所の自噴井について実施した。初年次(昭和62年度)と第2年次(昭和63年度)に得られた臨海部の被圧地下水のトリチウム濃度と比較して、丘陵部の被圧地下水のトリチウム濃度は高いことが特徴であり、この事実は、丘陵部の背斜軸の近辺を中心として被圧地下水への涵養があることを示しているものと考えられる。自噴量の季節変化に関する実測結果によると、本地域では夏季に降水量が多いにも拘らず自噴量が冬季よりも減少する傾向が認められ、周辺地域における揚水の影響が大きく働いている。自噴量の変動が深度の大きな井戸ほど大きいことは、臨海部での地下水の開発深度にも関連している。被圧地下水中の全陰イオン(3成分の当量比の合成値)に占める重炭酸イオンの割合と自噴井の深度との関係について考察した結果、全陰イオンに占めるHCO_3^ーの比の値は深度とともに大きくなることが明らかとなった。このことから、深度の大きな帯水層における地下水がより長い滞留時間を持つ傾向にあることが説明され、水質組成は滞留時間を定性的に知る上で良い指標となり得ることが判った。調査対象地域を背斜軸を中心として地域区分し、それぞれの区域に含まれる地下水の水質組成の平均値を算出したところ、涵養域からの距離が大きくなるにつれ、地下水の水質が判断される滞留時間がしだいに長くなっていく過程を明らかにすることができた。以上本研究では北勢地域を対象とした事例研究ではあるが、地表水から不圧地下水・被圧地下水へと転化していく過程の水質形成が明らかとなった。
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