1988 Fiscal Year Annual Research Report
高時間分解の温度・pH同時測定法によるミオシンATPase反応の解析
Project/Area Number |
62580220
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
児玉 孝雄 岡山大学, 歯学部, 助教授 (30034200)
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Keywords | ミオシン / ATP加水分解 / プロトン解離 / 吸熱反応 / ストップトフロー測定 / 筋収縮 / 酵素反応中間過程 |
Research Abstract |
筋収縮において、ミオシンは、ATPの結合・加水分解、加水分解産物の遊離というATPase反応と共役して、アクチンとの相互作用を行い、力を発生する。したがって、ミオシンATPase反応中間過程の熱力学的特徴を明らかにすることは、筋収縮の分子機構を解明する上できわめて重要な課題である。本研究の目的はミオシンATPase反応の中間過程、とくにATPの化学エネルギーが力学的仕事に利用できる形に変換される過程であると考えられるミオシンに結合したATPの分解に伴う熱変化とプロトンの出入りを同時測定することによって、熱力学的特徴と反応機構との相関をつけることである。 本研究費の補助によってFET pH測定装置を購入し、研究代表者が開発・改良進めているストップトフロー熱量計へ組み込んだ。これによって、30nmol程度のプロトンの出入りを不感時間10ミリ秒(ms)で測定できるようになった。ミオシンサブフラグメント(SF-1)とATPの相互作用にともなう熱変化とプロトンの出入りの測定を25℃および15℃で行った。25℃では、pH8.0、7.0でも速やかな熱とプロトンのburstが見られるが、いずれも装置の不感時間内に完了してしまう速い反応である。しかし、温度を15℃に下げると、速い大きな熱のburstの後に吸熱変化が認められるようになる。この吸熱変化は、pH8.0では不感時間内に終わってしまうが、pH7.0ではflow停止後、あよそ40msぐらい持続するようになる。これに対応して、プロトンの遊離も観測されるようになる。このような温度・pH依存性を示す吸熱・プロトン遊離過程に引き続いて、といずれの温度でも、ミオシン生成物複合体からの無機リン酸の解離に対応するきわめて遅い発熱とプロトンの遊離が認められる。これらの結果から、観測される吸熱変化とプロトンのburstはミオシンに結合したATPの加水分解に対応することが明ら かとなった。
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[Publications] 児玉孝雄、米谷快男児: 生物物理. 27. 59-62 (1987)
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[Publications] 児玉孝雄: 熱測定. 15. 2-9 (1988)
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[Publications] 児玉孝雄、深田はるみ: 蛋白質核酸酵素. 33. 310-319 (1988)
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[Publications] 米谷快男児、児玉孝雄: 蛋白質核酸酵素. 33. 320-327 (1988)
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[Publications] 児玉孝雄: 生体の科学. 39. 473-475 (1988)
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[Publications] Takao Kodama.;Kaoru Kometani.: Journal of Biological Chemistry.
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[Publications] Tetsuo Ohno.;Takao Kodama.: Science.
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[Publications] Takao Kodama.: Review of Scientific Instruments.
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[Publications] Takao Kodama.: "Stopped-flow calorimentry of myosin ATP hydrolosis:an implication of chemomechanical energy transduction.In "Molecular Mechanism of Muscle Contraction"" Plenum Publishing Co., 671-676 (1988)
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[Publications] Tetsuo Ohno.;Takao Kodama.: "ATP hydrolysis by shortening myofibrils.In "Muscle Energetics"" Alan R.Liss,Inc.,