Research Abstract |
学生や生徒が, 自然への驚ろきを持ち, 自然から学ぶ力をつけることができるような, 新しい教材の開発をめざして研究を行なった. とくに, 視覚に訴える実験として, 時間的なリズムが生じたり, 空間的な秩序の形成される化学的システムをとりあげて, 教材化を試みた. 本年度は, 塩水とコップがあれば実験の行なえる, 塩水振動子を中心に実験をすすめた. コップの底に小さな穴をあけ, コップ内に食塩水を入れ, それを真水の容器に浸すと, 穴を介して, 塩水・真水の周期的運動が生じる. このとき, コップの内外に電極を入れておくと, 水の上下運動を, 電気信号として記録することができることを見い出した. さらに, コップの穴の大きさ, 食塩水の比重, 外水面の面積などを変化させると, 水の上下運動の周期が特異的に変化することも分った. このような実験をすすめるうちに, 次のような意外な事実を見い出した. すなわち, 2つのコップを並べて, 実験を行なうと, 水の上下運動の周期が, 自発的に揃うことである. これは, 非線形振動子に特有な, "引き込み現象"である. 恐らく, 今まで知られている中でも, 最も簡単な実験系での"引き込み現象"である. 以上のような興味深い現象を, 非線形微分方程式により, 理論的にシミュレートすることも試みた. その結果"引き込み現象"も含め, コップの穴を介しての水の上下運動を, 理論的に解析することにも成功した. これらの, 実験の進み方や, データの解析方法等は, VTRに撮影・編集を行なった. 全国20個所以上の, 大学・研究所・高校・中学・教育委員会に, このVTRテープを配布した. その反響は大きく, いくつかの大学や高校で, この塩水振動子の研究を初めるようになっている. このように, 本年は, 当初予想した以上の成果をあげることができた. 次年度にむけて, 更に, 新しい教材の開発をすすめていきたいと考えている.
|