Research Abstract |
本研究班は, 自然災害に関する資料の調査, 比較検討・解析を通して, 社会のもつ潜在的な防災の能力が長期にわたっていかに変遷してきたかを考究することを目的としている. 自然災害の特徴は, ひとつにはその原因になっている自然現象の性質により, 他は, 災害が発生する地域の性質によって著しく異なっている. それ故, 本年度は, 北海道から九州にいたる地方別に都市化された現代社会の地域性を把握すること. ならびに, 冷害, 水害, 地盤災害, 地すべり, 震災, 火山噴火-農林災害などの現象別に社会環境との関係を検討すること, の2つの視点に分けて, 各研究者ごとに仕事を進めた. 共通して指摘されていることは, わが国において都市化が進むに従って, 災害の形態や特徴も次々と変化しているという事実である. 防災ポテンシャルの低い, 脆弱なところでは, 未開発地域の宅地化と道路網の開発に端を発して, 地盤災害を誘導し, わずかな自然の変化さえも生活圏をおびやかすほどになっている場合がある. 一方, それら被災を経験しながら防災・減災に対してより多くの先行投資が行われている例もみられる. しかし, 結局, 最後は, 三原山噴火の際に体験したように緊急避難を策として取らなければならなくなることも認めざるを得ない. これら地域社会の社会的・経済的変化とわれわれの問題とする自然災害が長い期間にわたってどのように移り変わってきたかを, 簡潔に述べることは難しいが, 今後は, それぞれの自然現象ごとに, また, 各地域ごとに社会との関係, そして, その歴史的な変遷を考察し, 向後の防災対策に役立つ基礎資料として, まとめたい. なお, 本研究に用いられた各種の試・資料は, それぞれの自然災害地区資料センターに, データーベースとして保存され, これからの突発災害の研究をはじめ,ひろく自然災害研究に活用されるよう管理・運用される予定である.
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