| Research Abstract |
鹿児島市内及び周辺のしらす斜面を対象として現地調査を行った. 斜面では層序の同定, 硬度測定, 土壌層厚の測定などを行った. 採取した試料を用い, 比重などの物理試験, および, pF試験, 一次元鉛直浸透試験, 三軸試験を行った. しらす斜面の崩壊には斜面の層序, 各層の力学特性の差異が重要な役割を果たしていることを従来より明らかにしてきたが, 本研究では, 保水特性, 浸透特性に焦点をあてている. そして, 一次元鉛直浸透試験結果より, 斜面を構成している各層間の透水係数の差異が土中水の挙動に影響を及ぼすことが明らかにされた. 土中水の挙動を定量的に評価するため, 間隙のモデルを提案し, 保水, 浸透特性について考察を加えた. また, 浸透力を考慮した斜面安定解析手法についても考察を加えている.
一方, 鹿児島市内のしらす急崖において斜面崩壊の履歴と斜面表層に形成された土層厚を調査・計測した. その結果, 次のような点が明らかになった. 調査地における斜面の崩壊は表層崩落, 表層滑落, 表層剥離の三つに分類される. 斜面には古い崩壊跡地と新しい崩壊跡地が複雑に入り混じって形成されている. 斜面を縦断的にみると, 土層厚は斜面上部で2mと厚く, 斜面中腹部では, 3-100cmと斜面上部と比較すると薄く, しかも, 広範囲な分布を示し, 斜面下部では30-100cmとなっている. 斜面上部で土層厚が厚いのは, 新期火山灰や降下軽石, 風化しらすによって斜面が構成されているためである. 斜面中腹部の急斜面では, 新旧の崩壊が入り乱れ, 土層厚もそれに対応して広範囲の値を示している. 土層厚は崩壊の履歴と対応しており, 土層厚が30cm程度以下の比較的新しい崩壊跡地の斜面では新たに崩壊は発生していない. すなわち, 崩壊の発生が予想される斜面は, 土層厚が30cm程度以上の比較的古い崩壊跡地の斜面である. こうした斜面を抽出することによって危険斜面の予想が可能である.
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