1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62604573
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
筏 義人 京都大学, 医用高分子研究センター, 教授 (00025909)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 寿郎 京都大学, 医用高分子研究センター, 助教授 (90026089)
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Keywords | 補体活性 / 血液適合性透析膜 / 化学修飾セルロース膜 / 表面グラフト化反応 / タンパク吸着 |
Research Abstract |
人工臓器の中で, 現在最も多量に用いられている人工腎臓における生体成分との相互作用において, 大きな問題点となっているのは, 透析膜表面と補体成分との相互作用である. 本研究においては, 血液透析膜素材の大部分を占めるセルロース膜と補体との相互作用を調べた. ここでは特にセルロースの補体活性を抑制するための化学修飾セルロース膜と補体分子との相互作用について述べる. 我々はセルロース膜の表面部分のOH基へのエステル化反応によりポリエチレングリコール(PEG)をグラフトカップリングしてセルロース表面と補体成分との相互作用を減少させ, バルク特性を変化させることなくセルロースの補体活性化を減少させることを試みた. また, 比較のためにパルミチン酸(C16)もグラフトカップリングした. まずCH50測定では, CH50の減少度は, 未修飾セルロースでは50%であるが, PEGをグラフトすると改善された. しかし, その改善の程度はグラフトするPEGの分子量が低いほど大きく, 分子量が400と1000のPEGによるグラフトでは20%に改善された. C5_a測定では, 未修飾セルロースは, 400ng/ml, PEG400グラフトで130ng/ml, C16グラフトで250ng/mlであり, PEGをグラフトすることによって大幅に改善された. 次にこれらの膜へのタンパク質吸着を測定した. C16グラフトでは反応時間とともにタンパク質吸着量は増加したが, PEGでは未修飾セルロースと変わらなかった. これはC16グラフトでは血漿タンパク質の吸着によって補体成分との相互作用が減少するという, Eberhartらの報告と一致する. しかし, この表面はBSAと同様にIgGも吸着しており, これは補体系の古典経路を活性化する可能性がある. 一方PEGではそのような作用とは異なり, PEG鎖がセルロース表面をカバーすることによって補体活性化が減少したと考えられる. これは水溶性グラフト鎖による生体成分との相互作用の減少によるものと考えている.
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[Publications] Y.Tamada and T.Ikada: Polymers in Medicine 2. Chiellini,E.et al.eds.(Polymer Sci.& Tech.34). 101-105 (1986)
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[Publications] Y.Tabata and Y.Ikada: J.Pharm.Pharmacol.39. 698-704 (1987)
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[Publications] T.Okada,Y.Tamada and Y.IKada: Biomaterials and Clinical Applications,A.Pizzoferato,eds.,Elsevier Science Publishers B.V.465-470 (1987)
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[Publications] 岸田晶夫,筏 義人: 日本化学繊維研究所講演集. 44. 71-78 (1987)
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[Publications] 筏 義人 編: "高分子表面の基礎と応用(上)・(下)" 化学同人, 512 (1986)