Research Abstract |
Siに直流通電すると, その清浄表面上の小面積In薄膜は電界の向きに輸送される. これにより固有の膜厚と構造を有するIn層が輸送方向に形成され拡がる. この固有形成層はいくつかの特異な性質をもっていて, 表面新物質相である可能性を秘めている. 本研究では, まず表面エレクトロマイグレーションの普遍性を確かめ, 固有相が他の系でも見られるかどうか調べるため, Si(111)上でBe, Al, Ti, Ni, Ag, In, Sn, Sb, Auの輸送を観察した. その結果, 蒸着膜厚が1モノレイヤ(ML)以上では, Al, Ag, In, Snは電界の方向に, Be, Auは反対方向に輸送されることがわかった. ここで1MLは7.8×10_<14>原子数/cm_2である. Ti, Ni, Sbでは顕著な輸送は見られなかった. 次に, これらのうち, 特にAgとAuについて丁寧に調べた. Agの場合, 陰極側で1MLの一定膜厚の層が形成され拡がる. 他方, 陽極側では, 膜端はほとんど動かなかったが, 膜厚が0.8MLに減少し, この領域が輸送とともに膜内側へ拡がっていった. 1MLの一定膜厚層の構造は√<3>×√<3>, 陽極側の0.8ML層は√<3>×√<3>と3×1の混ざった構造であった. 3×1構造には3方位のドメインの存在が可能であるが, とくに短周期方向が電界に平行なドメインが選択的に強く現れた. このように, Si(111)上Agは固有の被覆層を表面エレクトロマイグレーションによって形成することがわかった. Auの場合, 0.75MLの固有層が陽極側に拡がっていく. 陰極側では, 膜厚が波状の分布になってくる. これは他の系には見られない独特の構造である. 今後は, 他の半導体基板金属系での表面エレクトロマイグレーションの観察を進めるとともに, 固有層の構造と性質を調べて, 表面新物質相の発見製作に貢献したい.
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