1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62611510
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 敏嗣 東京大学, 地震研究所, 助教授 (00092320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗田 敬 東京大学, 理学部, 助手 (00111451)
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Keywords | マグマオーシャン / 炭素の溶解度 / 超高圧実験 / 核形成 / 地球の炭素 / 水素比 |
Research Abstract |
本年度は高温超高圧下での揮発性成分を含む系の実験を可能にする技術の開発とFe(Ni)-C-H_2O-珪酸塩素の溶融関係の研究を行った. この研究はマグマオーシャンとそれに付随した核形成のプロセスでC,Hに代表される揮発性成分がどのようなふるまいをするかを明らかにするためのものである. 出発物質として, Fe, Ni金属+ペリドタイト±含水鉱物を用い, グラファイト容器中で高温高圧実験を行なった. その結果, ペリドタイトの部分溶融度と金属相の合体・成長との関係など核形成のプロセスを理解する上で重要な基礎データが得られた. また, 一連の実験で生成された金属相中の炭素量を推定した結果, (1)等圧条件下では炭素量は温度増加に伴ない, 増加する, (2)等温条件下では, 圧力増加に伴ない減少する傾向があることが分った. またH_2Oを含む実験では金属相中に0.1μm程度の微小空げきが多数認められ, 超高圧下では多量のHが金属中に溶解していたことが推定される. これらの結果から, マグマオーシャンの表面付近(低圧)で金属成分は炭素を溶解して, マグマオーシャン中を沈降し, 炭素を含む核形成に関写するというプロセスが考えられる. 沈降の途中, 昇圧により過飽和となった炭素の一部はマグマオーシャン中にはきだされることになる. 水素の金属相への溶解度が低圧では小さく, 超高圧下で急激に増加するという, これまでの研究結果と合わせて考察すると, 現在の大気を含めた地球表面付近のC/H比が地球の始源物質に比べ, 極端に小さいという問題の解決への糸口がみつかったと言える. 本年度は技術開発(シール技術, 精密な計測系)に時間がとられ, C, Hの定量法を確率するには至らなかった. また炭酸塩鉱物の高圧下での安定性の問題は冷却固化の過程でのC成分の挙動を明らかにする上で重要であるので予備的実験を行った. 今後の揮発性成分を含む系としては重点的に研究されるべき分野と考えられる.
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