1987 Fiscal Year Annual Research Report
細胞増殖の調節(特にG1期とG2期で)に関与するヒト遺伝子のクローニング
Project/Area Number |
62614527
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西本 毅治 九州大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10037426)
|
Keywords | 細胞周期 / G1期 / G2期 / cDNA / DNAトランスフェクション法 / アミノ酸の繰り返し構造 / 核タンパク |
Research Abstract |
細胞増殖の調節はG1期とG2期でなされる. G1期では細胞は細胞密度, 培地の栄養状態, 増殖因子の有無などで細胞複製を止めるか否かを決定する. 癌化した細胞で, このG1期における調節機構が決落していることはよく知られており, 細胞の癌化と密接に関連している. したがってG1期における細胞複製の研究は細胞癌化のメカニズムを知る上で重要な意味がある. これまでに癌遺伝子の研究からかなりのことがG1期についてわかっているがG1期全体を明らかにするには, ほど遠い. 我達はG1期の細胞複製に必須な機構をこの過程に欠損を持つ温度感受性変異株を用いて組織的に研究している. 本年度はこの手始めとしてヒトX染色体に由来して, G1期からS期への移行に必須なヒト遺伝子とそのcDNAをクローンした. クローンされたcDNAは1554個のアミノ酸からなる分子量178, 768ダルトンのタンパク質をコードしていた. 興味あることに, このタンパク質はc端に120個のアミノ酸からなる配列が2回繰り返した構造を持ち, この繰り返し配列の直前に核タンパク質に特有な核への移行シグナルがあった. このcDNAは温度感受性変異株tsBN462を相補する活性としてクローンされたものであるが, 同じcDNAがこの変異株と同じ相補グループに属するts13株をも相補した. 現在, クローンされたcDNAの産物に対する抗体を作って細胞内での局在, 機能を研究することを計画している. G2期もまたG2期と同様に細胞にとって大切な細胞複製の調節を行っている. G2期の調節はG2期のものに比らべて単純であり細胞複製の調節を分るレベルで研究するよいモデルとなる. 我達は, G2期での調節に異常を持つ2個の変異株を分離しており, その変異の機構を分子レベルで研究している.
|
-
[Publications] T.Sekiguchi,: Experimental Cell Research. 169. 395-407 (1987)
-
[Publications] H.Sasaki: Radiation Research. 109. 407-418 (1987)
-
[Publications] R.Ishida,: Somatic Cell and Molecular Genetics. 13. 11-20 (1987)
-
[Publications] M.Ohtsubo,: Genes & Development. 1. 585-593 (1987)
-
[Publications] T.Sekiguchi: EMBO journal.