1987 Fiscal Year Annual Research Report
HLAクラスIIおよびIII領域遺伝子の分子進化学的研究
Project/Area Number |
62618507
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
笹月 健彦 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (50014121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 彰方 九州大学, 生体防御医学研究所, 助手 (60161551)
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Keywords | 分子進化, 遺伝病 / 先天性副腎過形成 / 遺伝子変換 / 遺伝子重複 / HLA / 多重遺伝子属 |
Research Abstract |
HLAクラスIII領域に, 補体第4成分(C4)遺伝子に隣接し, セットとして重複するステロイド21水酸化酵素遺伝子の構造を, 本酵素欠損症である先天性副腎過形成症患者について解析した. 1患者由来の21B遺伝子の全塩基配列を決定し, 正常な21B遺伝子および偽遺伝子である21A遺伝子と比較したところ, 第8エクソンから第10エクソンに至る領域が21A遺伝子と同一の塩基配列に置換していた. その周辺領域は21B遺伝子のままであったことから, 遺伝子変換が示唆された. ここで第8エクソン内の塩基置換は終止コドンをもたらすため, 同患者においては, 遺伝子置換が21水酸化酵素欠損症の原因と考えられた. さらに同塩基置換によって制限酵素Pstエサイトが形成されることを利用して, 健常人156名の21水酸化酵素遺伝子の構造をサザーンブロッティング法により解析したところ, HLA-B44-DRw13, Bw46-DRw8ハプロタンプを有する者では, 21A遺伝子の第8エクソン部分が21B遺伝子によって遺伝子変換を受けていることが示唆された. この構造変化はHLA領域ホモ接合体由来のDNAを用いて確認し, 21水酸化酵素遺伝子においては, 21Aと21Bの両遺伝子間で両方向性の遺伝子変換がおこり得ることを証明した. また種々の制限酵素を用いた解析から, HLA-B7-DR1, B14-DR1ハプロタイプにおいてはC4-21水酸化酵素遺伝子がセットとしてさらに重複し3連となっていることが確認された. HLAクラスII遺伝子のうちDQα遺伝子は, 対応するマウスI-Aα遺伝子に対して発現量の低いことが知られているが, 塩基配列の解析から, DQα遺伝子では, その発現制御に重要な役割を果たすYbox塩基配列内に1塩基置換が存在し, このため同領域に結合する正の転写因子との親和性が低下していることを証明した. DQ遺伝子はマウスI-A遺伝子とは異なる機能を有すると考えられるため, 発現量を変化させることによる分子進化機能の存在が示唆された.
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