1988 Fiscal Year Annual Research Report
高圧下におけるNMR,分子分光併用測定法の開発とその応用
Project/Area Number |
62840013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森島 績 京都大学, 工学部, 助教授 (50026093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石森 浩一郎 京都大学, 工学研究科・分子工学専攻・博士課程在学中, 日本学術振興会特別研 (20192487)
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Keywords | 高圧NMR / 高圧レーザーフォトリシス / ヘム蛋白質 / 活性化体積 |
Research Abstract |
本研究は、高圧下(数千気圧)におけるNMR、分光測定を簡便なガラスセルを用いて行うことのできる新しい測定手法の開発と応用を目的としている。本年度は高圧下においてレーザーフラッシュフォトリシスの測定ができるようなシステム一式の製作の完成とそのヘム蛋白質化学への応用を試みた。昨年度試作した四ツ窓付きレーザーフォトリシス高圧セルの改良を行ない、これを既設のフラッシュフォトリシス測定装置に附属させて、ヘム蛋白質の酸素、一酸化炭素の再結合反応速度の圧力依存性に関する詳細な測定実験を行った。その結果、極めて満足すべき結果が得られ、高圧レーザーフラッシュフォトリシスの測定装置の完成をみた。たとえば、ミオグロビンの酸素結合体のレーザーフラッシュフォトリシスを種々の圧力F(1〜3000気圧)で、マイクロ秒、ナノ秒のタイムスケールで測定を行った結果、ヘム鉄への酸素分子の結合過程の活性化体積は負、タンパク質内部の拡散過程の活性化体積は正の符号をもつことが始めて明らかにされた。タンパク質のアミノ酸構成が少し異なるクジラ、ウマ、イヌ、ヒツジのミオグロビンで比較したところ、ヘム近傍のアミノ酸残基が1つ或は2つ異なると、これらの活性化体積は符号とともに著しく異なることが見出され、酸素分子のタンパク内の拡散過程のパスについて新しい知見が得られた。またこの方法をヘモグロビンの一酸化炭素の再結合反応にも応用したところ、α鎖、β鎖において結合反応の活性化体積は著しく異なっていた。さらに高圧NMR測定の結果と合せて、圧力下におけるヘモグロビンの構造変化とリガンドの結合能の変化との相関関係も明らかにされた。
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