放射光X線の磁気散乱等による微視的磁性に関する同時測定法の開発

1988 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 62850009
• Research Institution: National Laboratory for High Energy Physics
• Principal Investigator: 安藤 正海 高エネルギー物理学研究所, 放射光実験施設, 教授 (30013501)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 河田 洋 高エネルギー物理学研究所, 放射光実験施設, 助手 (90152967) ; 並河 一道 東京学芸大, 教育学部, 助教授 (10090515)
• Keywords: X線磁気散乱 / 共鳴散乱 / 電子非占有準位 / スピン偏極 / 希土類磁性体 / ガドリニウム / L_<IIIII>吸収端 / 蛍光EXAFS / 吸収スペクトル / 中間状態干渉効果

Research Abstract

前年度は、本補助金で購入した冷凍機、電磁石、マルチチャネルアナライザー等を用いて実験装置の立上げを行ない、希土類磁性体ガドリニウムのL_<II>吸収端に於て共鳴磁気散乱スペクトルの測定を試み、L共鳴磁気散乱強度は希土類磁性体5d電子非占有バンドのスピン偏極を調べる上で十分実用になる程度に大きいことを確かめた。これに続い、本年度は、L_<III>吸収端においても共鳴磁気散乱スペクトルの測定を行ない、併せて磁気依存性および温度依存性の測定を行ない、X線共鳴磁気散乱法が微視的磁性の有効な実験手段であることを示した。さらに本年度は本研究の中心課題であるX線磁気散乱と蛍光X線の同時測定を試み、放射光実験施設BL15Bの三軸ゴニオメーターを利用して実験系を構成し実験を行ない、測定に成功した。この結果、同一試料の同一場所について、同一条件の下で、電子非占有準位に関する状態密度とその偏極の様子が同時に調べられるようになった。さらに、吸収端から離れた領域では蛍光X線強度の測定から蛍光EXAFSが得られ、一方共鳴磁気散乱の測定から共鳴散乱中間状態磁気干渉効果によるスペクトルが得られることが示された。これらを解析すれば、原子配列とスピン配列に関する知見が得られる。このような測定法を具体的磁性材料の研究に適用することは、例えば磁性多層膜人工格子等によって試みる予定であったが、これは試料がまだ準備できていないため、次年度以降に実行したい。結論として放射光X線の磁気散乱等による磁性の微視的同時測定はプロトタイプの装置を構成することによって、システムとして十分機能することがわかった。したがって、今回構成したシステムの原理に従い実用機を作れば、基礎と応用に関し磁性の新しい研究分野を開拓する強力な測定装置となるに違いない。