1988 Fiscal Year Annual Research Report
刺激に対する単一細胞の応答の顕微自動解析装置ーストップトフロー法による即時反応解析の試み
Project/Area Number |
62870103
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
大野 宏毅 自治医科大学, 医学部, 講師 (30049085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 博行 山之内製薬中央研究所, 所長付 (40169719)
滝 龍雄 自治医科大学, 医学部, 講師 (70049097)
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Keywords | 顕微分光 / 画像解析 / ミクロ・ストップトフロー法 / ホルモン受容 / 免疫応答 |
Research Abstract |
目的: 本研究の目的は、顕微鏡下に捉えた単一培養細胞に、迅速に刺激物質(抗原、ホルモン、神経伝達物質、細胞成長因子など)を投与し、その後の細胞の応答(特に、細胞内分布の変化も含めたイオン濃度の変化)を実時間で検出・記録し、解析するシステムを開発することである。 現在までの進展状況 (1)細胞内への蛍光色素の導入 細胞内カルシウム濃度測定のためにはfura2が、細胞内pHの測定にはBCECFが従来から有効に使われてきた。本研究でもこれらの色素をいくつかの細胞に適用し、特にBCECFは細胞を選ばず効率よく染色できることを確認した。他方、この1年の間に、細胞内ナトリウム濃度(SBFIなど)、カリウム濃度(PBSIなど)、マグネシウム濃度(Mag-fura2など)、および塩化物イオン濃度(SPQなど)に敏感に応答して蛍光スペクトルの変化する色素が開発・市販され、容易に使用できる状況になった。更に、可視光で使用できるカルシウム蛍原試薬(fluo3など)も開発された。本研究で試作している装置は、これら続々と開発される試薬に即座に対応できるものである。 新しい蛍光試薬SBFIとfluo3の細胞内への導入を試みた。SBFIはやや染色が悪いが、低濃度の界面活性剤を援用すると、高感度テレビカメラで単一細胞を画像として捉えるに充分な程度には染色可能であった。染色の程度は細胞の種類にもよる。リンパ球など浮遊細胞は非常によく染まるが、それに比較してマクロファージMDCK細胞のような付着性の細胞は色素取り込み量が少なかった。 細胞外からイオノフォアを投与することによって、細胞内イオン濃度(ナトリウムイオン、カルシウムイオン、及び水素イオンを試みた)を変化させ、イオン濃度の変化を蛍光強度の変化として連続的に画像記録することができた。但し、次に述べるように、光源に限界があるので、時間分解能は当初の目標値(0.1秒)には達していない。 (2)装置開発の現状 細胞内イオン濃度分布を画像化し、定量的に解析するためには、蛍光色素を2つの異なる波長で励起し、各々の励起波長に対する蛍光強度を記録する必要がある。蛍光強度を光電子増倍管で検出する方式ならば、技術的には全く問題がなく、ミリ秒スケールでの計測が既に達成されている。本研究では、更に進んで、細胞内イオン濃度分布の変化を画像として連続的に記録することを目標にしている。現在のテレビジョン記録伝送方式に従うと、毎秒30画面、イオン濃度変化としては毎秒15画面のスピードで記録可能となる。現在の装置の問題点は、蛍光励起光源の強度が足りないため、特に紫外励起の必要な色素(fur2、SBFIなど)を使用する画像計測において、上の時間分解が達成されていない点である。今後、光源を改良し、テレビレートでのイオン濃度分布変化を記録できるシステムを完成させたい。
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