1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62890003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野口 淳夫 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (80091916)
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Keywords | ultrarapid freezing / liquid helium / very low temperature / cryoprotective agents / helium gas / cryostat / ultrarapid thawing / peripheral mononuclear cells |
Research Abstract |
1.研究の総括 細胞の凍結レベルについては凍結速度によって4段階あることが理論的に考えられてきた。第一の段階は超緩慢凍結で、脱水は完全に進行するが塩害が出現する。第二はほどよい速度の凍結で、ある程度脱水された細胞は塩害の生じる前に凍結される。第三は急速凍結で脱水が不十分な段階で凍結が進むので氷晶形成により細胞障害が生じる。第四は超急速凍結で氷晶形成させずガラス化するというものである。これまで、第三段階までは実験的に確認され、最適な第二段階についてより精致に検討されている。本研究の成果は、これまで理論的には考えられてきた第四段階の方法を行なうための装置を開発し、きわめて高い生存率の凍結結果を実現せしめたことである。 2.生細胞凍結に関する理論的考察 グリセリンやDMSOのような凍害防止剤を用いないで凍結させると、通常の凍結法(プログラムドフリ-ザ-法、ステップワイズ凍結法など)では100%細胞は死滅する。本研究においては、このような凍害防止剤は一切用いていないにもかかわらず従来法に劣らない生存率を得ているから、その理由を明らかにしなくてはならない。近年の知見によれば、凍結細胞が生存する場合は、細胞内の水がガラス状態になっているとされている。凍害防止剤の添加はガラス化されやすい状態を生じせしめる。純水のガラス化は10^6℃/sec以上の速さで急冷すると生じるが、本研究で用いた装置においては出口温度でおよそ4×10^4℃/sec以上の速さで冷却したと測定され、この程度の冷却速度でガラス化が生じるとは考えにくい。本研究で用いる凍結溶液にはBSA(3%)やグルコ-ス(0.3M)が含まれており、これらの成分の濃度に比例して凍結細胞の生存率が高まることから、これらの成分がガラス化かそれに近い状態への相変化に関与していることは確実である。第二に入口温度での冷却速度が計れないこと、出口温度における冷却速度も現在の測定装置では正確な測定に限界があることから、実際の冷却速度はより急速である可能性が強いものと思われる。 3・研究の反省点、今後の課題 超急速凍結装置の基本システムは開発できたが、無菌化、軽量化への工夫、液体ヘリウムの再利用システム、超急速解凍装置の開発などについて一層の検討が必要である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] A.Noguchi,M.Fujisaki: "Ultrarapid cell-freezing by liquid helium" Nature.
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[Publications] A.Noguchi,M.Fujisaki: "Ultrarapid freezing of peripheral mononuclear cells without employing crioprotectants." Criobiology.
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[Publications] 野口淳夫: "細胞の超急速凍結の理論と実際" 低温医学.