1991 Fiscal Year Annual Research Report
固体ヘリウム中の格子欠陥のX線トポグラフィによる研究
Project/Area Number |
63060002
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Research Institution | Tokyo Engineering University |
Principal Investigator |
鈴木 秀次 東京工科大学, 工学部, 教授 (00011411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 哲夫 高エネルギー物理学研究所, 放射光実験施設, 助教授 (20005888)
鈴木 敬愛 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70013208)
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Keywords | bcc ^3He / hcp ^4He / 結晶成長 / マルテンサイト変態 / 内部応力 / サブ・バウンダリ / 拡張転位 / 上昇運動 |
Research Abstract |
昨年度から稼働し始めた,希釈冷凍定をもつX線トポグラフ撮影装置を用いて,bcc ^3HeのX線トポグラフの撮影を始めた.bcc ^3He結晶ではhcp ^4Heに比べてサブ・バウンダリが発生し易く,サブバウンダリは試料容器の壁に平行になる傾向がある.サブ・バウンダリが余り著しくないときには,数時間の燒飩で統合され数が少なくなる.しかもバウンダリは非常に真直ぐになる.サブ・バウンダリが出来ると,内部応力はほとんど完全に除去され,サブ・バウンダリ以外の格子欠陥は著しく少ない. hcp ^4Heの大きな結晶を変態させてbcc構造にすると,0.5mm程度の間隔でサブバウンダリが一面に形成され,内部応力はほとんど完全に除去されている.これとbcc ^3Heの成長直後のサブバウンダリは大変良く似ている.両者に共通していることは,同じバ-ガ-スベクトルをもつ転位が大量に導入されているということである.すなわち,hcp→bccマルテンサイト変態では,変態に伴うマクロなせん断歪を除去するために基底面にほぼ直角な面にそってa/3〈112^^ー0〉すべりを起こす必要があり,そのせん断変形は約10°の傾きに対応する.このすべりを起こした転位は上昇運をしてサブ・バウンダリを作る.結晶成長の場合には液体が固化している間に液体ヘリウム供給管が凍結し,密閉された容器内で固化することになる.固化の進行とともに容器内の圧力は低下する.固体ヘリウムは大きな圧力勾配という内部応力をもっている.この内部応力を緩和するために転位が導入されるのであるが,bcc結晶中の転位はほとんど拡張していないために上昇運動を起こし易く,サブバウンダリが形成されて,内部応力は殆ど解消される.これに対してhcp結晶中の積層欠陥エネルギ-は非常に低く,転位は広く拡張している.このため上昇運動は起き難く,サブ・バウンダリの形成も,内部応力の解消も困難である.hcp ^4Heとbcc ^3Heの組織の相異はこの考えで一貫して説明できる。
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[Publications] Hideji Suzuki,Izumi Iwasa,Tetsuo Nakajima,Ichiro Yonenaga: "Observations of Mantensific Transformation in Solid Helium-4 by SR X-Ray Topography" Materials Transaction,Japan Institute of Metals. 33. No.3 (1992)