1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63301007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 一美 東京大学, 文学部, 助教授 (60065480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 大 成城大学, 文藝学部, 助教授
西村 清和 埼玉大学, 文学部, 助教授
戸澤 義夫 群馬県立女子大学, 助教授
増渕 宗一 日本女子大学, 文学部, 教授
佐々木 健一 東京大学, 文学部, 助教授 (80011328)
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Keywords | 美 / 記述 / 判断 / 論理 / 還元 / 伝統 / 革新 / 生活圏 / 共有性 / 理念 |
Research Abstract |
本年度は、さしあたり個々の研究者が自己の当該課題についての研究経過を再吟味し、試論を公共の場に討論の資料として提供することを目的としていた。参加者以外の講師を招いて研究領域の拡大を企てることも当該年度のひとつの課題であったが、これは日程上の問題が大きく関与して実現しなかった。しかし、定例研究会の方は、広島大学の金田晋氏の現象学的思惟における価値問題の析出についての意欲的な研究を皮切りとして、東京大学の藤田のニーチェとプラトンを両極にすえた思惟の場におけるパトスとロブスの緊張についての研究、聖心女子大学の細井雄介氏によるリップスの心理学的な感情移入の美学的な再検討と着実に意欲的に開催され、既に活発な議論を喚起している。今後も東京大学の坂部恵氏、日本女子大学の増渕宗一氏、東京大学の佐々木健一氏などの研究発表が予定されている。資料の収集や調査に関しては各々の研究者によって順調になされているとの報告があり、中心となっている東京大学の美学研究室においても順調に研究資料が整備されつつある。次年度においてもかかる研究活動がより精力的により厳密に遂行されてゆく筈である。無論、我々の研究において最も大切なことは、言わば〈Sache〉としての《美》の問題を如何に確かなこととして把捉するかということであり、そのためのアプローチの方法を従来にも増して厳密に考えてゆくことであった。還元をあえて研究題目に揚げたのは、何によりも我々と事との間の慣習的関係を根本的に洗い直す必要を痛切に感じたからに他ならない。この点については、まだ遺憾ながら充分な省がなされているとは言難い。多様なアプローチが示唆されながら問題がそれとして仕上げられているとは言えない。我々は必ずしもひとつの理念や方法を指定しようとは思わないが、何らかの方向性を足出すべく努力している。
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