1988 Fiscal Year Annual Research Report
キーカレンシーの侵食(erosion)と交替に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
63301085
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
深町 郁彌 九州大学, 経済学部, 教授 (20037104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平岡 賢司 熊本商科大学, 商学部, 助教授 (20128820)
山本 栄治 福岡大学, 商学部, 教授 (30122758)
片岡 尹 大阪市立大学, 商学部, 教授 (20047393)
大庭 清司 野村総合研究所, 財務開発部, 部長
島崎 久彌 関東学院大学, 経済学部, 教授 (10170929)
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Keywords | 基軸通貨 / ドル本位制 / 変動相場制 / 過剰貨幣資本 / 再建金本位制 / 為替媒介通貨 / 取引通貨 / 国際銀行業 |
Research Abstract |
本年度の研究によって明らかにされた論点は以下の通りである。ドルが国際通貨になった道筋は、ポンドの場合とは異なり、貿易金融(企業レベル)からくる取引通貨をステップに決済通貨・準備通貨へと展開していったのではなく、第二次大戦後創設されたIMF制度のもとでの「ドル本位制」的要素に則っている。この視点からは、大戦前の時期については、再建金本位制下の分裂した国際金融市場でのドル比重の増大や三国通貨協定下のドルの役割は、ドルの国際通貨としての地位の確立とは評価出来ない。また、大戦後の時期については、IMF体制の持つ「二重性」からくる「上からの」国際通貨化のルートの分析を必要ならしめると同時に、変動相場制移行以後重要性を増した為替媒介通貨に分析の焦点がおかれる。(山本)アメリカの銀行業が作り上げた国際信用システムが、その際の国際通貨としてのドルの機能を支える現実的基盤である。このシステムは、歴史的には、世紀転換期以降ニューヨーク市場を中心に着々と形成されていった。(平岡)アメリカ国内での金融制度の発展は、基軸通貨国の金融活動としてシステムに大きな影響を与える。(青山、数阪)環太平洋圏における銀行業・通貨圏の研究では、その国際信用システムの各部分の動きが基軸通貨国金融市場との関連で分析された。(石田・島崎)第二次大戦後、国際通貨国としての地位を固めたアメリカは、しばしばドル危機にみまわれ、基軸通貨国としての負担を強く受けることとなった。(西倉・前田)この負担への対処が、変動相場制への移行という形でのIMF体制の変質であった。1985年以降のアメリカの債務国への転化と変動相場制下での国際的な過剰通幣資本の激しい動きは、国際信用システムの動揺をまねき、また現在のドルの基軸通貨としての地位の低下を具体的に表わしている。(片岡・深町)
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Research Products
(11 results)
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[Publications] 青山和司: 証券経済. 第164号. 77-107 (1988)
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[Publications] 石田高生: 商学討究. 第39巻. 111-152 (1988)
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[Publications] 片岡尹: 経営研究. 第39巻. 57-76 (1988)
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[Publications] 数阪孝志: 経済学研究. 第54巻. 179-204 (1988)
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[Publications] 島崎久彌: 経済系. 第156号. 30-75 (1988)
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[Publications] 島崎久彌: 経済系. 第157号. 1-50 (1988)
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[Publications] 西倉高明: 証券研究年報. 第3号.
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[Publications] 平岡賢司: 海外情報研究. 第16巻. 15-32 (1988)
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[Publications] 深町郁彌: 金融ジャーナル. 第30巻. 11-16 (1988)
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[Publications] 前田淳: 商経論集. 第24巻. 123-143 (1988)
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[Publications] 山本栄治: "基軸通貨の交替とドルー「ドル本位制」研究序説ー" 有斐閣, 286 +Xii (1988)