1990 Fiscal Year Annual Research Report
キ-・カレンシ-の侵食(erosion)と交替に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
63301085
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
深町 郁彌 九州大学, 経済学部, 教授 (20037104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川波 洋一 九州大学, 経済学部, 助教授 (80150390)
平岡 賢司 熊本商科大学, 商学部, 教授 (20128820)
片岡 尹 大阪市立大学, 商学部, 教授 (20047393)
大庭 清司 野村総合研究所, 総合研究本部, 本部長
島崎 久彌 関東学院大学, 経済学部, 教授 (10170929)
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Keywords | クロス・カレンシ-取引 / 為替媒介通貨 / 国際的マネ-・フロ- / 国際金融市場 / 国際分散投資 / 国際的資産代替 / 基軸通貨 |
Research Abstract |
本年度は、これまでの資料収集・調査及び討論・研究会を踏まえ、当初の研究課題に対して一定の解答を与えることが目的であった。本年度は数回の研究・討論会を通じて次のような結論を導きだした。 (1)アメリカ国際収支ファイナンスを中心とする1980年代の先進国間マネ-・フロ-の特徴は、経常収支不均衡を上回るグロスの資本取引の拡大である。変動相場制における為替リスクの増大は、為替銀行のカバ-取引や「外ー外」取引、機関投資家による非ドル建て証券への国際的地域分散投資、既存金融資産の金利・為替の動向に応じた国際的代替取引を増大させ、債権債務の両建化を促進した。これは準備通貨の侵食の新しい現象である。 (2)このような国際的マネ-・フロ-の活発化のなかで、国際金融市場の多極化と統合化の並進という現象が生じた。1930年代と著しく異なる特徴である。非ドル建て取引の増大がニュ-ヨ-ク、ロンドン、東京といった各国金融市場の拡大、国際金融市場の分極化をもたらす一方、各国金融市場間の国際的資産代替の活発化は、特に証券市場を通じて各国際金融市場の直接的統合化(グロ-バライゼ-ション)をもたらしている。 (3)これに伴う外国為替市場の膨張の過程において、ドルを用いない直接的なクロス・カレンシ-取引が増大し、インタ-・バンク為替市場において、ドル・マルク・円のシェアの均等化傾向が生じていることを検証することができた。ドル圏に対してマルク圏の形成と円圏の萌芽がみられる。これは為替契約通貨としてのドルの優位性の低下である。契約通貨あるいは金融市場での表示通貨としての機能をあわせて、基軸通貨の侵食(erosion)の新しい状況を検出することができた。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 片岡 尹: "「国際通貨ドルの侵食と日本の資本輸出」" 大阪市立大学『経営研究』. 41ー5・6. 71-89 (1991)
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[Publications] 山本 栄治: "「『ドル本位制』のEROSION(侵食)ー外国為替市場と為替媒介通貨ドルの検討を通じてー」" 日本証券経済研究所『証券経済』. 172. 155-183 (1990)
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[Publications] 平岡 賢司: "「国際金融カルテルの形成とアメリカ金本位制防衛ー1895年金融恐慌を中心としてー」" 熊本商科大学『海外事情研究』. 17ー2. 1-19 (1990)
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[Publications] 井上 伊知郎: "「いわゆる『クロス取引』についてー為替媒介通貨ドルとの関係においてー」" 久留米大学『産業経済研究』. 31ー1. 1-34 (1990)
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[Publications] 神沢 正典: "「累積債務問題の焦点ー金融危機から生存の危機へー」" 阪南大学『阪南論集』社会科学編. 26ー1. 57-72 (1990)
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[Publications] 前田 淳: "「多極システム下の国際的マネ-・フロ-」" 九州大学『経済学研究』. 56ー1・2. (1991)
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[Publications] 川本 明人: "『多国籍銀行と国際金融リスク』" 広島修道大学総合研究所, 152 (1990)