砕波帯内の流体運動に関する総合的研究

1989 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 63302048
• Research Institution: Chuo University
• Principal Investigator: 服部 昌太郎 中央大学, 理工学部, 教授 (90055070)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 灘岡 和夫 東京工業大学, 工学部, 助教授 (70164481) ; 酒井 哲郎 京都大学, 工学部, 助教授 (30026182) ; 澤本 正樹 東北大学, 工学部, 教授 (90016519) ; 渡辺 晃 東京大学, 工学部, 教授 (80011138) ; 岩田 好一朗 名古屋大学, 工学部, 教授 (10029150)
• Keywords: 砕波 / 乱流構造 / 緩勾配方程式 / 大規模渦 / 数値流体 / デ-タ処理 / 水理実験法

Research Abstract

砕波帯流体運動場の解明の基本とも言える、波動及び乱れエネルギ-の輸送機構に対して、酒井と岩田は実験結果をベ-スにして検討し、波動・乱れエネルギ-方程式に組み込まれる各項の定量的評価を行った。沢本と灘岡は、数値計算によって浅海域の砕波現象とその大規模乱れを再現するため、波と渦の共存場に対してラグランジュ的な取り扱いをした渦素子法と、境界要素法と離散渦法による計算手法をそれぞれ開発した。その結果、砕波点近傍の波動場の非線形性と分散性に加えて、乱れがその後の砕波変形に大きく関係することが解明された。水口は、これまで提案されている各種の数値解析砕波変形モデルの妥当性を比較検討して、上記の本研究での成果の妥当性の検証を試みた。服部は、砕波乱れのエネルギ-逸散機構を、実験結果によってモデル化し、砕波帯内の地形変化を考慮した波高減衰算定モデルを提案し、実験との比較によりその適合性を確かめた。実際の砕波帯内に見られる諸現象を対象として海岸構造物を海浜地形の一部と見なし、透過潜堤が設置されている海浜上の波浪変形の検討を、渡辺・磯部及び泉宮が行った。解析は砕波減衰を考慮した緩勾配波動方程式と、その近似としての放物型方程式とによって行っている。実験は服部も行い、数値解析結果は実験と良好な一致を示し、砕波によるエネルギ-減衰効果が極めて大きいことが確認された。柴山は、砕波帯内に発生する定常性の強い岸沖方向流れの流速分布などの特性を、また三村は、護岸の影響を受ける砕波帯内の流体運動挙動を、波動及び漂砂特性の変化に着目して、規則波と不規則波による実験を行い、波動の不規則性がこれらの現象に大きく関係することを定量・定性的に確認した。
以上の本研究でえられた理論・実験的成果により、これまで極めて困難と考えられていた、砕波帯内の流体運動場を総合的に算定しうるモデルを提案することが可能となった。

Research Products

• [Publications] 青野利夫、服部昌太郎: "砕波帯内の乱れのエネルギ-逸散モデルと波高変化計算" 海岸工学論文集. 36. 36-40 (1989)
• [Publications] 服部昌太郎: "粗面上の砕波と斜面の反射特性に関する実験" 土木学会第45回年次学術講演会概要集. (1990)
• [Publications] Masataro Hattori,Tetsuyuki Katsuragawa: "Improved calculation of the shonliy wave field" ASCE.Proc.22nd ICCE. 22. (1990)
• [Publications] 岩田好一朗、富田孝史、石井弘行: "砕波後の波動エネルギ-に関する実験的研究" 土木学会中部支部、平成元年度研究発表講演概要. 216-217 (1990)
• [Publications] 岩田好一朗、富田孝史、石井弘行: "砕波後の波の波動エネルギ-の変動特性" 第45回年次学術講演会講演概要. (1990)
• [Publications] 岩田好一朗、富田孝史、石井弘行: "砕波後の波の位置と運動エネルギ-の低減過程" 海岸工学論文集. 37. (1990)
• [Publications] 片岡暁彦、長尾昌朋、沢本正樹: "注入トレ-サ法を用いた巻き砕波の内部機構に関する実験的研究" 東北支部技術研究発表講演概要. (1990)
• [Publications] 酒井哲郎、梶原雅也: "乱れ輸送方程式による砕波帯乱れの位相変化の解析" 土木学会関西支部年次学術講演会講演概要. (1990)
• [Publications] Y.Tada,T.Sakai and E.Obana: "Variation of surf zone turbnlence during one wave period" Abstracts of 22nd Inteructional Coastal Eng.Conf.(1990)
• [Publications] 酒井哲郎、多田幸夫、尾花英次郎: "砕波帯の乱れの位相変化" 海岸工学論文集. 36. 26-30 (1989)
• [Publications] 佐藤愼司、尾崎元久、柴山知也: "二成分合成波の砕波限界と長周期変動の相互関係に関する研究" 海岸工学講演会論文集. 35. 187-191 (1988)
• [Publications] 灘岡和夫、増田幹雄、鈴木徹: "境界要素法と離散渦法を応用した「波」と「渦」の相互干渉過程の解析" 海岸工学論文集. 36. 41-45 (1989)
• [Publications] 灘岡和夫、増田幹雄、鈴木徹: "境界要素法と離散渦法を応用した波・渦共存場の解析法の開発と応用" 土木学会論文集.
• [Publications] Nadaoka,K.,Masuda,M.Suzuki,T.: "Anumerical modelling of wave-eddies coexisting field and its applications(to be submitted to Fluid Dynamics Research)" Fluid Dynamics Research.
• [Publications] 長尾昌朋、沢本正樹: "渦素子法を用いた水平床上砕波の数値計算" 東北支部技術研究発会講演概要. 126-127 (1989)
• [Publications] 長尾昌朋、沢本正樹: "砕波変形に及ぼす乱れの影響" 東北支部技術研究発会講演概要. (1990)
• [Publications] 三村信男、加藤始、山木穣: "砂浜に対する護岸の影響の再検討" 土木学会年次学術講演会講演概要集、第II部門. (1989)
• [Publications] 三村信男、加藤始、山本穣: "海浜縦断地形に対する護岸の影響に関する研究" 茨城大学工学部研究集報. 37. (1990)
• [Publications] 岡安章夫、磯部雅彦、渡辺晃: "砕波帯におけるエネルギ-収支と戻り流れのモデリング" 海岸工学論文集. 36. 31-35 (1989)
• [Publications] A.Okayasu,M.Isobe and A.Watanabe: "Modeling of energy transfer and undertow in the surf zone" Proc.22nd Coastal Eng.Conf.
• [Publications] 金岡裕之、磯部雅彦、渡部晃: "透過潜堤上の波浪変形に対する放物型方程式モデル" 土木学会第45回年次学術講演会講演概要集、II.
• [Publications] 泉宮尊司、遠藤雅人: "潜堤および透過性構造物のある海浜における波動場解析" 土木学会海岸工学論文集. 36. 638-642 (1989)
• [Publications] 泉宮尊司、遠藤雅人: "透過性波浪制御構造物にも適用可能な一般化された緩勾配波動方程式について" 土木学会新潟研究調査発表会論文集. 第7回. 51-57 (1989)
• [Publications] Takashi Izumiya: "Extension of mild slope eguation for waves propagating over a permeable submerged breakwater" Proc.of Int.Conf.on Coastal Engineering. 第21回. (1990)
• [Publications] 泉宮尊司、古俣弘和、水上淳: "大規模潜堤による波向制御効果および局所的反射率について" 土木学会海岸工学論文集. 37. (1990)
• [Publications] 諌山太郎、佐藤愼司、柴山和也: "複合斜面上における不規則波群の底面流速に関する研究" 土木学会第44回年次学術講演会講演概要集第2部. 624-625 (1989)
• [Publications] 佐藤愼司、諌山太郎、柴山和也: "緩勾配斜面上における不規則波の底面流速変動に関する研究" 海岸工学講演会論文集. 35. 78-82 (1988)