1989 Fiscal Year Annual Research Report
植生の根茎葉系の作用を考慮した地圏・気圏一体の水文学確立のための水文素過程の研究
Project/Area Number |
63420042
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
日野 幹雄 東京工業大学, 工学部, 教授 (30016323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福西 祐 東北大学, 工学部, 助手 (60189967)
灘岡 和夫 東京工業大学, 工学部, 助教授 (70164481)
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Keywords | 植生効果 / 地圏・気圏 / 気候緩和 / 水文素過程 / 気温 / 炭酸ガス濃度 / 光合成 / 湿度 |
Research Abstract |
植生は、地圏と気圏とを結ぶ径路であり、根系は土壌中の水分や化学物質のシンクである。葉は気圏への水蒸気のソ-スであるばかりでなく、光合成作用によって炭酸ガスを吸収し酸素を放出し、蒸散作用によりあるいは遮蔽効果により気温緩和の作用を行う。本研究は、植生の効果を考慮し地圏と気圏を一体として取扱う水文学の確立のための基礎研究である。 1.風洞付きライシメ-タ-による実験:長さ4m、幅35cm、風路部高さ50cm、土壌部高さ50cmの風洞を二台製作し、一台は裸地のままあるいは芝生とし、他の一台は(稲科の)雑草を植え、比較実験を行い、次の結果を得た。裸地、芝生に対し雑草は日射の遮蔽と蒸散の効果により流下方向に大きな気温低下(最大3ー4℃)と湿度上昇(最大5g/m^3)をもたらす。雑草風洞のCO_2シンク量は日射量と、水蒸気ソ-ス量は飽差量と高い相関をもち、土壌水分は2次元的な因子として作用する。熱シンク量は水蒸気ソ-ス量及び流入温度で説明される。 2.枯葉の保温効果:芝生とその上に枯葉層を作った場合の冬期夜間の風速・気温・地温等を測定し、長波放射による枯葉層上面の冷却・枯葉層内の保温効果を調べた。 3.数値モデルNEOーSPAM、Soil、Plant、Atmospheric Modelの開発とシミュレ-ション:植生の存在を考慮した気流の運動および連続の方程式、熱および炭酸ガスの拡散方程式、根系をシンクとした土壌中の水分移動に関する不飽和浸透方程式、および新たに導いた植生の気孔の蒸発散・光合成作用を表す式により非定常三次元場の数値モデルを開発し、実験結果をシミュレ-トした。また、植生の配列が気候緩和に及ぼす効果を調べた。さらに植生による気候緩和が葉による遮蔽作用よりも、蒸散作用によるものであることを明らかにした。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] 日野幹雄: "風胴付きライシメ-タによる植生の気候緩和効果に関する基礎実験と解析" 水文・水資源学会誌. 2[1]. (1989)
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[Publications] 神田学: "植生による気候緩和効果に関する基礎的研究" 第33回水理講演会論文集. 33. 685-690 (1989)
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[Publications] 神田学: "植生内微気象数値モデル(NEO SPAM)による数値実験ーー植生群落の配置の影響" 土木学会第44回年講講演会概要集. 第2部. 188-189 (1989)
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[Publications] 神田学: "植生が大気表層及び土壌水分に及ぼす影響" 第34回水理講演会. (1990)
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[Publications] 神田学: "植生の気候緩和の数値モデル" 第3回数値流体力学シンポジウム講演会論文集. 599-602 (1989)
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[Publications] 福西祐: "土壌中の不飽和浸透流のランダム・ウォ-ク法による数値シミュレ-ション" 日本流体力学会誌(ながれ). 8[1]. 37-47 (1989)
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[Publications] 木内豪: "降雨浸透にともなう表層不飽和帯中の溶質移動の数値モデルによる検討" 第33回水理講演会論文集. 33. 241-246 (1989)
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[Publications] 長谷部正彦: "フィルタ-分離AR法による流出予測と地の流出モデルとの比較評価について" 土木学会論文集. 405、IIー11. 195-204 (1989)
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[Publications] Kinouchi,T.: "Numerical Simulation of Infiltration and Solute Transport in an SーShaped Model Basin by BoundaryーFitted Grid System" J.of Hydrology(to be published). (1990)
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[Publications] Hasebe,M.: "Flood forecasting by the filter separation AR method and comparison with modeling efficiencies by some rainfallーrunoff models," Journal of Hydrology. 110. 107-136 (1989)
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[Publications] Hasebe,M.: "A comparison of some rainfallーrunoff models for nonlinear flood forecasting" Proceedings of the International Conference for Centenial of Manning's Formula and Knichding's Rational Formula. 186-195 (1989)
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[Publications] 日野幹雄: "洪水の数値予報ーーその一歩ーー" 森北出版, 252 (1989)