1989 Fiscal Year Annual Research Report
高温における分散強化機構の新理論の構築とその実験的検証
Project/Area Number |
63420047
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Research Institution | Institute of Space and Astronautical Science |
Principal Investigator |
堀内 良 宇宙科学研究所, 教授 (40013627)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 英一 宇宙科学研究所, 助手 (40178710)
長谷川 正 東京農工大学, 工学部, 教授 (50005328)
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Keywords | 分散強化合金 / オロワンモデル / 粒子と転位の相互作用 / 高温強化機構 / 内部酸化 |
Research Abstract |
高温における分散強化合金の強化機構としては、粒子間での転位の張り出しを考えるOrowanの機構が確証のないままに定説化している。本研究は、拡散が活発となる高温では、粒子の弾性率がmatrixよりも大きい場合でも、転位と粒子の相互作用は拡散緩和により引力型となり、拡散緩和の生じない低温における反発型とは異なる基礎として分散強化合金の強化機構を再検討するものである。転位のglide motionに対する粒子の抵抗は、相互作用を反発型と考えても引力型と考えても大きな差異は生じないが、climb motionに注目すると、Orowanモデルでは促進、引力型では大きな遅滞となり、回復過程に大きな差異を生じる。この事が高温における分散強化合金の変形・回復挙動を特徴づけることを単結晶分散強化合金によって実証する実験を進めている。平成元年は本研究の第二年度で昨年に引き続き単結晶分散強化合金試料の作成と高温引張試験および加熱による静的回復挙動を中心とした実験を進めた。Cu-Si合金をブリッシマン法により単結晶化し、これを1.2mmの板状試料としてAl_2O_3+Cu_2O+Cu粉末中で1073〜1273Kに加熱し、中部酸化を行なった。この過程で試料中心部に転位が導入され亜粒界が形成される予期しない結果が得られた。この原因を検討した結果内部酸化により体積膨張が生じたものと結論され、本研究の主題ではないが新知見として平成元年4月の金属学会大会で報告した。引張試験では分散強化合金は初期から急速な加工硬化を示し、容易すべり領域を示さないが、変形に伴う主すべり系の活動が優先していることを示した。Orowan機構によると考えられる低温で変形した試料での静的加熱による回復と高温変形後の静的回復挙動は大きく異なり前者では100〜400℃にかなりの回復が生じるのに対し、300℃の高温変形では600℃の加熱に対してもほとんど回復せず引力型相互作用の粒子が転位の上昇運動を大きく遅滞させることを示した。
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