1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63430002
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小尾 欣一 東京工業大学, 理学部, 教授 (10016090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石渡 孝 東京工業大学, 理学部, 助手 (40134811)
渋谷 一彦 東京工業大学, 理学部, 助教授 (30126320)
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Keywords | 時間分割ESR / 三重項ー三重項エネルギー移動 / スピン分極 / 高励起三重項状態ベンジル |
Research Abstract |
本年度は、単一波長励起による時間分割(TR-)ESR法により、三重項内の緩和過程にともなうスピン分極の反転、および高励起三重項状態へのエネルギー移動について研究を進めたので、以下にその概要を記す。 1.ベンジル類の緩和過程にともなうスピン分極の反転:77K低温剛体溶媒中で観測されるベンジル三重項のTR-ESR信号のスピン分極は吸収の極性を示す。一方、室温のベンジル/トリエチルアミン(TEA)で生成するベンジルアニオンラジカルのスピン分極は、アミン濃度が高いときは吸収を示すが濃度が低くなると発光に変わる。また、ベンジルにスピン分極をモニターする試薬として低濃度のニトロオキサイド(NOX)を添加した系では発光の信号が観測された。ベンジルのフェニル基をナフチル基に変えたαーナフチルでもこれらと同様な結果が得られた。さらにαーナフチル/TEAにNOXを添加した系では、ベンジルアニオンの吸収とNOXの発光の信号が同時に観測された。これらの結果は、反応の前駆体であるベンジル類三重項内の緩和過程において、スピン分極が吸収から発光に反転していることを示唆している。 2.高励起三重項状態へのエネルギー移動:アセナフテンキノン(ANQ)はT_2(nπ^*)→T_1(ππ^*)の内部変換の際スピン分極の反転が起こることが知られている。本研究では、各種の増感剤を用いた三重項ー三重項エネルギー移動でスピン分極の反転より、T_2へのエネルギー移動が起ることを直接証明することに成功した。増感剤のエネルギーが21300cm^<-1>より低いときには増感剤のスピン分極がANQに移動し、T_1へのエネルギー移動であることを示している。一方、増感剤のエネルギーが21700cm^<-1>以上では、エネルギー移動によりスピン分極が反転する。これはT_2へのエネルギー移動が起きていることを示しており、そのエネルギーが21500cm^<-1>付近であると結論される。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] K.Takahashi;K.Obi;I.Tanaka;T.Tani: Chem.Phys.Letters. 154. 223-227 (1989)
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[Publications] S.Tomoda;M.Shimoda;Y.Takeuchi;Y.Kajii;K.Obi;I.Tanaka;K.Honda: J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1988. 909-912 (1988)
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[Publications] K.Shibuya;M.Nemoto;A.Yanagibori;M.Fukushima;K.Obi: Chem.Phys.121. 237-244 (1988)
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[Publications] K.Shibuya;T.Kusumoto;H.Nagai;K.Obi: Chem.Phys.Letters. 152. 129-134 (1988)
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[Publications] T.Ishiwata;K.Obi;I.Tanaka: J.Mol.Spectrosc.127. 353-361 (1988)
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[Publications] H.Nagai;T.Kusumoto;K.Shibuya;K.Obi;I.Tanaka: J.Phys.Chem.92. 5432-5436 (1988)