1988 Fiscal Year Annual Research Report
色素体の分裂装置に関する免疫電子顕微鏡法による研究
Project/Area Number |
63440003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒岩 常祥 東京大学, 理学部, 教授 (50033353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 重行 東京大学, 理学部, 助手 (70161338)
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Keywords | イデユコゴメ(Cyanidium caldarium) / 葉緑体 / 分裂リング / サイトカラシンB / クレマート / 蛍光顕微鏡 / 電子顕微鏡 / アクチンの繊維 |
Research Abstract |
イデユコゴメ(Cyanidium caldarium)の葉緑体の分裂リングの機能を解析した。この藻は僅か2umの単細胞の紅藻である。細胞は細胞核、ミトコンドリア、色素体をそれぞれ1個含んでいる。2回の内性分裂後、1個の母細胞には4個の娘細胞が形成される。同調細胞分裂の開始後葉緑体が同調的に分裂を開始する前にサイトカラシンB(50μg/ml)と微小管重合阻害剤であるクレマート(10μg/ml)を投与し、蛍光顕微鏡と電子顕微鏡を用いて細胞核と葉緑体の挙動を観察した。クレマート処理したものは、母細胞内の細胞核は1個であったが、葉緑体は4個であった。一方サイトカラシンBで処理したものは葉緑体は1個であったが、細胞核は4個であった。この結果は、細胞核分裂には微小管が関与しているが、アクチンの繊維は関与していないこと、これに対して、葉緑体の分裂にはアクチン様繊維が関与しているが、微小管は関与していないことを示していた。更に電子顕微鏡を用いて分裂に関与する構造の実体を詳しく探った。葉緑体が球形からフットボール状になるまでは分裂リングは観察することが出来なかったが、ピーナツ状になる直前に、沢山の100nmほどの小粒が、葉緑体の赤道表面の細胞質側に沿って並んだ。次にこれらの小粒から、5nmほどの細いアクチン様の繊維が多数赤道に沿って伸びて、巾60nm厚さ30nmの束となり、葉緑体を一周ぐるりと囲んだ。束が完全に形成されると小粒は消失した。葉緑体の分裂の進行とともに細い繊維の束は、電子密度を増大させながら、あたかも軟らかいオモチを紐で切るかのように収縮し続けた。その結果、葉緑体は2つに分裂した。葉緑体の分裂に続いて細胞核が分裂し、サイトキネシスによって細胞膜がくびれ込んでくるのと並行してミトコンドリアも分裂した。最後にサイトキネシスによる内性胞子分裂によって2つの娘内性胞子が形成された。第2回目の葉緑体の分裂も基本的には第1回目の分裂同様に起きた。
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[Publications] Yasuda,T.;T.Kuroiwa;T.Nagata: Planta. 174. 235-241 (1988)
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[Publications] Nii,N.;T.Kuroiwa: J.Horticultural Science. 63. 37-45 (1988)
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[Publications] Mita,T.;T.Kuroiwa: Protoplasma. suppl.1. 133-152 (1988)
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[Publications] Sasaki,Y.;T.Kuroiwa: Plant Mole.Sci.63. 37-45 (1988)
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[Publications] Nemoto,Y.;S.Kawano;S.Nakamura;T.Mita;T.Nagata;T.Kuroiwa: Plant Cell Physiol.29. 167-177 (1988)
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[Publications] Kuroiwa,H.;M.Sugai;T.Kuroiwa: Protoplasma.146. 89-100 (1988)