1989 Fiscal Year Annual Research Report
分子鎖の直接観察による天然セルロ-スおよびその誘導体の構造解析
Project/Area Number |
63440013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡野 健 東京大学, 農学部, 教授 (30011927)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三城 昭義 東京大学, 農学部, 助手 (90012004)
太田 正光 東京大学, 農学部, 助教授 (20126006)
磯貝 明 東京大学, 農学部, 助手 (40191879)
空閑 重則 東京大学, 農学部, 助手 (60012051)
杉山 淳司 東京大学, 農学部, 助手 (40183842)
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Keywords | セルロ-ス結晶 / 電子線回折 / X線回折 / 電子顕微鏡 / バロニア / マ-セル化 / 結晶変態 |
Research Abstract |
CP/MASーC13NMR分析によれば、天然セルロ-スはバクテリア・バロニア型とコットン・ラミ-型に大別される。そこで両者の結晶構造の差異を明らかにするため、前者からバロニアを、後者からホヤを選び、制限視野電子線回折図を撮り比較検討した。両者の回折図は60以上の独立した回折点を示し、それら全てを説明できる結晶単位胞に著しい違いが見いだされた。すなわちホヤの回折点は小単位胞(a=0.821、b=0.829、c=1.038nm、γ=97.3°によって指数づけできたが、バロニアは第1、3、4、5層線に小単位胞では指数づけできない回折点があることがわかった。Yamamotoらはバロニアを高温水蒸気処理すると、そのNMRスペクトルがコットン・ラミ-型に変ることを見いだしている。そこでその試料の電子線回折図を撮り、詳細に検討した結果、水蒸気処理温度が高いほど小単位胞で指数づけできない回折点の強度が減少することがわかった。それらの結果からバロニアの単位胞は大単位胞ではなく、3斜晶の小単位胞(a=0.954、b=0.825、C=1.036nm、α=90.0°、β=57.0°、γ=96.6°であることを見いだした。したがって天然セルロ-スには単斜晶と3斜晶の2種類の結晶があることがわかった。 セルロ-スIはマ-セル化によって不可逆的にセルロ-スIIに変態する。不可逆性の機構を明らかにする第一歩として、アルカリ膨潤初期のラミ-繊維を水洗乾燥して、繊維の横断面内における結晶型の分布を電子線回折によって調べた。その結果、繊維の表層部はIIに変態していたが内層部はIとIIのミックスで、表層部に比べて内層部のマ-セル化は遅れがあることを見いだした。また水洗温度によってIとIIの量比が変ることもわかった。さらに長時間膨潤させた場合にも量比が変ることから、不可逆性はアルカリ膨潤段階に生じると判断できた。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] NamーHun Kim,J.Sugiyama,T.Okano: "Xーray and electron diffraction study of Naーcellulose I.Formation and its reconversion back to cellulose I." Mokuzaigakkaishi. 36. 93-98 (1990)
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[Publications] Junji Sugiyama,T.Okano,H.Yamamoto,F.Horii,H.Odani: "Transformation of Valonia cellulose crystals by alkaline hydrothermal treatment" Macromolecules.
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[Publications] Junji Sugiyama,A.Isogai,T.Okano: "Single crystal of cellulose II" in preparation.
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[Publications] Takeshi Okano,N.Kim,J.Sugiyama: "Supermolecular structure of alkaliーswollen cellulose.Naーcellulose I and IIB" J.Appl.Polym.Sci.
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[Publications] Takeshi Okano,A.Koyanagi,Y.Kondo,A.Sarko: "Cellulose and wood,chemistry and technology" Structural variation of native cellulose related John Wiley & Sons,Inc., 1638 (1989)
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[Publications] Junji Sugiyama,T.Okano: "Cellulose and wood,chemistry and technology" John Wiley & Sons,Inc., 1638 (1989)
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[Publications] Shigenori Kuga,R.M.Brown Jr.: "Cellulose and wood,chemistry and technology" John Wiley & Sons,Inc., 1638 (1989)