1988 Fiscal Year Annual Research Report
筋収縮初期の分子変化から張力上昇までの遅れの生理学的意義
Project/Area Number |
63440019
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松原 一郎 東北大学, 医学部, 助教授 (90010040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼倉 治郎 名古屋大学, 医学部, 助教授 (30143415)
八木 直人 東北大学, 医学部, 助手 (80133940)
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Keywords | 速筋 / 遅筋 / 高速X線回折 |
Research Abstract |
ニワトリの速筋(PLD)と遅筋(ALD)を31℃の生理的食塩水に浸し、X線ビームを当てて、筋の長軸と直角な方向に生じる二つの回折ピーク(10反射と11反射)を記録した。従来の研究から、ミオシン分子頭部がアクチンと結合すると、10反射の強度が減り、11反射の強度が増えて、二つの反射の強度比(I_<11>/I_<10>)が増加することが知られている。この知見に基づき、筋収縮時の強度比の増加を、ミオシンとアクチンの結合反応の指標にした。 速筋を電気刺激して等尺的強縮を起こしたところ、強度比は刺激開始後80ミリ秒で最大に達した。張力の増加はこれよりも遅れて進み、120ミリ秒で最大に達した。張力増加の遅れの程度を定量化するために、強度比増加のハーフ・タイム(t_<1/2>)から張力増加のt_<1/2>までの時間を測ったところ、17ミリ秒であった。 遅筋を同じ生理的条件で電気刺激し、強縮を起こした。強度比は刺激開始後200ミリ秒で最大に達した。いっぽう張力の上昇は著しく遅く、1700ミリ秒でようやく最大になった。強度化増加のt_<1/2>から張力増加のt_<1/2>までの時間は160ミル秒で、速筋の約9倍であった。 従来の生化学的研究から、いっぱんにミオシンとアクチンが反応するとき、先ず結合反応が起き、次にこの結合体が張力発生反応を起こすと考えられている。結合反応も張力発生反応も、ミオシンとアクチンの反応サイクルの一部分を構成している。いっぽう、強縮時の維持熱発生率に基づいて、遅筋における反応サイクルが速筋の反応サイクルより7〜15倍も遅く回ることが知られている。今回の研究結果は、この遅れの主な原因が、ミオシンとアクチンの結合反応ではなく、いったん形成された結合体の張力発生反応の遅れにあることを示している。
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[Publications] YAGI,MATSUBARA: Journal of Molecular Biology.
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[Publications] MATSUBARA,MAUGHAN,SAEKI,YAGI: Journal of Physiology,London.
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[Publications] YAGI,MATSUBARA: "Molecular Mechanism of Muscle Contraction edited by Sugi & Pollack Plenum Publishing Corporation" 369-380 (1988)