1990 Fiscal Year Annual Research Report
虚血臓器の遊離カルシウムによる細胞障害過程ーー細胞骨格の崩壊とミトコンドリアの機能障害ーー
Project/Area Number |
63440025
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田川 邦夫 大阪大学, 医学部, 教授 (40028296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上池 渉 大阪大学, 医学部, 助手 (40152847)
黒澤 和平 大阪大学, 医学部, 助手 (70178127)
吉田 征夫 大阪大学, 医学部, 助教授 (10144453)
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Keywords | 虚血 / 細胞内カルシウム / ミトコンドリア / 細胞骨格 / 潅流 / 再潅流障害 / グルタチオン / Indo 1 |
Research Abstract |
本研究では虚血臓器の細胞障害過程を、細胞内カルシウムの動態を中心として、細胞骨格の崩壊とミトコンドリアの機能障害の関点から追求する事を目的とした。本年度は虚血下での細胞内カルシウムレベルを動的に追跡するとともに、再酸素化時におけるミトコンドリア内膜の障害をカルシウムとの関連で解析し、以下の成果が得られた。(1)ミトコンドリアを無酸素下においてもマトリックス酵素の漏出はみられないが、途中で再酸素化するとその瞬間急速な酵素の漏出が生じた。これは再酸素下時にマトリックス内の遊離カルシウムが上昇することによる内膜の障害であり、ホスホリパ-ゼの活性化によるものではないことが明らかとなった。またリポソ-ムを用いて膜に過酸化負荷を加えると、内部に含まれる物質の内、カルシウムのみが特異的に遊出してくることが判明し、過酸化障害とカルシウムの放出を考える上で有力な手がかりが得られた。(2)ファイバ-誘導型の反射蛍光分光装置を用いて、潅流心筋細胞内のカルシウムレベルをreal timeで追求することが可能となった。カルシウムレベルは筋収縮に同調して高低を繰り返すこと、また無酸素下ではカルシウムレベルは上昇するが再酸素化により再び低下することが証明された。しかし無酸素状態が長い場合には再酸素化と同時に一旦はカルシウムレベルは低下するがすぐに上昇に転じ、筋が拘縮状態となることが判明した。(3)ミトコンドリア内にはNADPーグルタチオン反応系による過酸化物除去機構が存在する。しかしグルタチオンの合成酵素系はミトコンドリア内には存在せず、グルタチオンは細胞質から輸送されてくるものと考えられていた。ミトコンドリア内膜におけるグルタチオンの輸送を解析したところ、リン酸との交換輸送でなされていることが判明した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Hiroshi Takami: "Leakage of cytoplasmic enzymes from rat heart by the stress of cardiac beating after increase in cell membrane fragility by anoxia" Eur.J.Physiol.416. 144-150 (1990)
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[Publications] Kazuhei Kurosawa: "Transport of glutathione across the mitochondrial membranes" Biochem.Biophys.Res.Commun.167. 367-372 (1990)
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[Publications] Kazuhei Kurosawa: "Kinetics of hydroperoxide degradation by NADPーglutathione system in mitochondria" J.Biochem.108. 9-16 (1990)
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[Publications] 井上 徹: "虚血組織リン脂質変動ーーエネルギ-代謝との関連" 蛋白質・核酸・酵素. 36. 420-425 (1991)
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[Publications] Motonobu Nishimura: "Analysis of changes with time in intracellular free calcium concentration during hypoxiaーreoxygenation of intact rat heart containing Indo 1" Circ.Res.(1991)
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[Publications] Toru Inoue: "Ca^<2+>ーinduced and phospholipaseーindependent injury during reoxygenation of anoxic Mitochondria" J.Biol.Chem.(1991)
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[Publications] Toru Inoue: "Molecular Biology of the Myocardium" Japan Scientific Societies Press, (1991)