1988 Fiscal Year Annual Research Report
学歴主義の汎化道程に関する研究-社会諸集団の抵抗と受容-
Project/Area Number |
63450034
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
天野 郁夫 東京大学, 教育学部, 教授 (50022398)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志水 宏吉 大阪教育大学, 教育学部, 専任講師 (40196514)
森 重雄 東京大学, 教育学部, 助手 (80174366)
|
Keywords | 学歴主義 / 汎化過程 / 社会諸集団 |
Research Abstract |
昭和60〜62年度に交付された文部省科学研究費一般研究B「地域における学歴の再生産構造の研究」において、丹波篠山という一地域のインテンシヴな調査から、日本の近代化過程における学歴主義の制度化の様相を中等教育と社会諸集団との関わりという視点で明らかにした。ただ、そこでは対象が男子に限定されていたため、男子にとっての異なる意味をもつであろうという仮定のもとに、今後の課題として残された。 そこで、昭和63年度は、女子と学歴との関係を男子と比較しつつ探ることを目的として、当該地域に大正初期に設立された唯一の高等女学校の学校文化・社会的機能について、文献資料や高等女学校卒業者へのインタビュー等を用いて分析した。その結果、(1)男子と異なり、女子にとっての学歴は、職業達成との結びつきを持たない。(2)高等女学校は、旧中産階級を中心とした出身階級の持つ文化とは異質な、都会的でハイカラな教養や文化を与えてくれる場とみなされていた。(3)高等女学校卒業という学歴は、そうした教養・文化を身につけたことの証明であった。 (4)結果的に、その学歴は、学歴を取得することで新中産階級となった男子との結婚のパスポートとしての機能を果たした。等の知見を得ることができた。 これらの知見をもとに、次年度は、戦前期においてごく一部の社会層との関わりしか持たず、しかも男子と女子とではかなり明確な意味の違いを持っていた学歴が、戦後いかにして性別を問わず、あらゆる社会層に汎化していったのかを明らかにすることを課題としている。具体的には、(1)平成元年3月に、戦中から戦後にかけて当該地域の中等教育科関の教員であった者に対するインタビュー調査、(2)同年8月に、その時期中等教育機関に在学していた者に対する郵送調査を計画している。
|