1988 Fiscal Year Annual Research Report
シリカ・エアロジェルを利用したポジトロニウム気体分子相互作用の研究
Project/Area Number |
63460037
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 邦男 東京大学, 教養学部, 教授 (40012314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長嶋 泰之 東京大学, 教養学部, 助手 (60198322)
兵頭 俊夫 東京大学, 教養学部, 助教授 (90012484)
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Keywords | シリカ・エアロジェル / ポジトロニウム / 陽電子 / 気体分子 |
Research Abstract |
シリカ・エアロジェルは、直径数10AのSiO_2微粒子が疎でランダムな3次元ネットワークを形成している物質であって、内部には径数100Aの広大な空隙が多数存在する。この物質に陽電子を入射せしめると、SiO_2粒子内で減速された陽電子により生成されたポジトロニウム (Ps) が1eV程度のエネルギーを持って数多く空隙中に飛び出すことはよく知られている。わがグループは、この空隙中に種々の気体分子を導入すれば今まで不可能だったPs-気体分子散乱の実験が可能になることに着目し、既に幾つかの先駆的な研究成果をあげて来た。本研究では更に多角的で詳細な研究を行うために、先ず現有の角相関測定装置に電磁石を導入してオルソ・パラ混成効果を制御しPsの寿命を変えられるようにした。また、半導体検出器や電源、アンプ、波高分析器等を新たに買い整え、対消減光子エネルギーのドップラー幅の時間分割測定が行なえるようにした。これらの措置によって、Psが気体分子との相互作用によって時々刻々に減速されゆく状況が追求できるようになり、研究は一層の深みを増すことが期待されるに至った。ただし現在はドップラー測定装置の部品の一部は寿命測定装置との兼用であって、フルに運転できないのが残念である。 柿元・兵頭は先ず、キセノン気体について圧力を変えた角相関測定を行ない、従来の寿命測定では相手にし得なかった短寿命パラPs成分の圧力変化を考察するという巧妙な方法で、この気体中のPs生成に関する永年の謎を解明することに成功した(J.Phys.Bに公表) 。そのほか、種々の気体について、中性粒子としてのPsは衝突に際し殆ど分子の回転や振動を励起しないことを始め、酸素中Psのオルソ・パラ変換の断面積等、貴重な知見が次々に得られつつある (1988年ベルギーでの国際会議で発表) 。
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