1989 Fiscal Year Annual Research Report
日本の電力生産と消費体系の技術史的特質に関する調査研究
Project/Area Number |
63460229
|
Research Institution | IBARAKI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
井原 聡 茨城大学, 教養部, 教授 (70106730)
|
Keywords | 日本の技術史 / 日本の電気技術史 / 日本の電気事業 / 電気争議 / 電力生産と消費 / 電力技術 |
Research Abstract |
1.日本の電気事業とその技術に関わる史資料の整理については、(1)基本的な研究書、電気事業者社史、電力技術史等文献のデ-タ・ベ-スを作成した。(2)『電気事業要覧』から1930年度のデ-タを標準にした発電所一覧をコンピュ-タ-に入力した。その結果、電源開発に関して時代別・水系別・出力別・事業者・地方別等の分析が可能になった。(3)電気争議に関する新聞報道等のコンピュ-タ-入力を行った。昨年の富山、茨城の分を含めこれによって電気争議の全体像を分析できる可能性がでてきた。(4)その他、電力需給、電力生産に関する諸デ-タ入力を実施した。 2.電力生産技術と消費技術との関係では(1)電力生産は水力(流れ込み式、調整池式、貯水池式)と火力発電と多様である。一方、高圧・大電流を必要とする化学産業、定圧定電流を必要とする機械産業と産業用電力消費の形態も多様である。また一般用・家庭用電力は消費電力量は極めて少ない。電力技術体系のこの生産と消費の双方で量・質ともに異なる技術の混在、閉じたシステムの必要といった技術的特質がその事業展開をどう規定したのか検討を行なった。(2)1920年代は産業用エネルギ-として電力の選択。産業の要求に無計画的に応じた生産設備の拡大。一般電力消費部門でのタングステン電球普及。1930年代は産業用電力需要が落ち込み、電源の効率的運用と効率的な電力消費の追求。その結果としての東西融通をも可能にした送電連係や企業合同。安い産業用電力料金と高い一般用電力料金の料金制度の法制化。(3)電気争議は一般需要者の電力を受ける権利を主張した闘いでもあったといえる。電力生産地点と消費地帯の2極分解と電力の大消費地への集中過程のなかで「家庭電化」はおこぼれに預かっていたといえる。
|