1988 Fiscal Year Annual Research Report
フーリエ変換マイクロ波分光法による有機金属分子の高分解分光
Project/Area Number |
63470007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 泰樹 東京大学, 教養学部, 助教授 (40106159)
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Keywords | ファンデアワールス錯体 / フーリエ変換マイクロ波分光 / 分子線 / 純回転スペクトル |
Research Abstract |
本年度は、フーリエ変換型マイクロ波分光器を完成させ、その動作試験を行うことを第一の目標としていた。本援助金により周波数帯域、8-18GHzをカバーする分光器を完成させることができた。研究目標の達成のためにはこの分光器が従来型のシュタルク分光器と比べ、どの程度の感度的な優位性があるかを検討する必要がある。このため硫化カルボニル分子の各種の同位体の回転線を測定し、そのS/N比を調べた。その結果^<18>O^<13>CSという自然存在比が通常の^<16>O^<12>CSの10^<-5>の同位体種が充分なS/N比で観測でき、通常のシュタルク分光法に比べ少なくとも一桁は高感度であることが確かめられた。この結果にもとづき、極めて双極子モーメントの小さいファンデアワールス錯体であるAr…HCCHの回転遷移をマイクロ波帯で初めて観測し、精度の高い分子定数を決定した。 金属原子を含む分子の分光の手がかりとして、比較的低温で気化し、取り扱いの容易を水銀原子をとり挙げ、そのファンデァワールス錯体の分光を試みた。水銀原子を含む錯体は水銀光増感反応との関連からも興味を持たれているものである。水銀原子のビームと充分子蒸気圧で生成するため300°C以上に加熱のできるパルスノズルを試作し、使用した。その結果、Hg…OCS、HgO、およびHg…Arの3種の分子(錯体)のスペクトルを観測することができた。Hg…Arは紫外スペクトルが知られていたが、純回転スペクトルは初めて観測されたものである。更にこれは、原子-原子のファンデァワールス錯体としてその純回転スペクトルの観測された初めての例である。他の2分子についてもこれまで分光学的データは全くなく、本研究で始めてその存在を明らかにしたものである。 水銀を含むこれらの新分子種の分光の成功は、この分光法の新たな可能性を開いたものと考えられる。今後は、他の金属原子ビームの生成のための新しい工夫も試みる予定である。
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