1988 Fiscal Year Annual Research Report
カルベン反応における非結合相互作用の効果と超安定カルベンの分子設計への応用
Project/Area Number |
63470014
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
富岡 秀雄 三重大学, 工学部, 教授 (20024599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 滋 三重大学, 工学部, 講師 (40192447)
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Keywords | 隣接基関与 / 低温マトリックス合離 / ジデュリールカルベン / トリプチシルカルベン / カルベのフィリシティー / 立体保護 |
Research Abstract |
カルベン炭素に直接結合していない置換基(イオン性置換基と立体的置換基)によるカルベンの安定化を計る目的で、先駆体ジアゾ化合物の合成、その光分解によるカルベンの発生と生成物分析による反応性の評価、低温分光学による中間体の観測を行い以下の知見を得た。 1.イオン性置換基としてカルボキシレート、ホスホネート基を導入すると、カルベンは強い求核性を示すことから、カルベンの求電子中心が分子内アニオン中心と強く相互作用することを明らかにした。しかしESRでは基底状態多重度及びその構造は変化しないことが解った。一方アルコキシカルボニル基をフェニルカルベンの0位に導入すると、カルボニル基がカルベンの求電子中心と相互作用し、カルボニルイリド中間体を生じることを低温でのIRによる確認し、更に反応性もこのことを反映し求核性を示すことを明らかにした。又、ジフェニルカルベン、フルオレニリデンの0位にヘテロ原子を持つ種々の置換基を導入し、その生成物から、これら置換基のカルベン中心との相互作用の本質を考察し、そのカルベンの安定化に対する効果を評価した。 2.立体的に混雑したカルベンとしてジデュリールカルベンを発生させその反応性を検討した結果、ジメチルカルベンに比し顕著な差異を示すことを明らかにした。これはm位に存在するメチル基による0ーメチル基に対するつっかい効果によって説明でき、この方法が立体効果の増巾の面からきわめて有効であることが解った。又、トリプチシルカルベンを発生させ、その反応性からトリプチキシル基の立体保護基としての効果を評価した。その結果、このカルベンは大きな立体障害を受けていることが解り、カルベンの保護基として有用であることを示した。 本年度得た体験と知見から目的とする超安定カルベンに対する戦略が明確となっており、その見通しは明るい。
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[Publications] H.Tomioka,F.Haya,K.Suzuki: J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1090-1091 (1988)
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[Publications] H.Tomioka,O.Inoue: J.Chem.Soc.,Chem,Commun.1183-1184 (1988)
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[Publications] H.Tomioka,K.Hirai: J.Chem.Soc.,Chem.Commun.(1989)
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[Publications] 富岡秀雄,大田和康規,村田滋: 日本化学会誌.
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[Publications] S.Murata,Y.Ohtawa,H.Tomioka: Chem.Lett.
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[Publications] H.Tomioka,Y.Ohtawa,S.Murata: J.Org.Chem.