1989 Fiscal Year Annual Research Report
エラストマ-ゲルにおける構造の形成と崩壊のダイナミクス
Project/Area Number |
63470083
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小野 勝道 東北大学, 非水溶液化学研究所, 助教授 (40006325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 尚志 東北大学, 非水溶液化学研究所, 助手 (00181553)
及川 英俊 東北大学, 非水溶液化学研究所, 助手 (60134061)
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Keywords | 橋かけ構造 / 加硫反応 / 拡散律速反応 / 電子顕微鏡 / 蛍光ラベル / タンパク質網目 |
Research Abstract |
イオウおよびDCP加硫天然ゴムの橋かけ過程の解析と、それによって生ずる構造との対応について詳しく検討した。さらに、特殊なバイオエラストマ-であるウバ貝の蝶番靭帯の構造と性質との関係を調べ、構造形成の機構について考察を行った。 1.前年に引き続き加硫過程における構造発現を加硫反応の反応論理的立場から議論するために、イオウ加硫天然ゴムの加硫過程の反応速度論的解析を行った。その結果、加硫反応の際に構造形成にあずかる分子鎖の運動は未加硫の線状分子のレプテイション拡散ではなく、初期の橋かけ反応によって生じた分岐状の分子の網目中における遅い拡散であることが明らかとなった。この拡散の速度と加硫反応の特性時間との相対関係とによって、加硫反応が拡散支配か反応支配かが決まると推定した。 2.延伸したDCP加硫ゴムのミクロ不均一構造について、高分解能の走差型電子顕微鏡を用いて研究した。延伸比が3倍程度から不均一構造が現れることが明らかとなった。簡単な画像解析を行った結果、不均一構造には異方性がなく延伸比によらず等方的な構造が存在していることが判明した。さらに、わずかにチオ-ル基を導入したポリイソプレンを蛍光ラベルして、加硫によるエキサイマ-発光強度の変化から構造の変化を推定したところ、加硫によって分子鎖どうしが排除されることがわかった。この効果も不均一構造が発現する一つの原因であると考えられる。 3.二枚貝の蝶番部分に存在する特殊な不溶性のタンパク質は、水中膨潤状態ではエラストマ-の性質を示す。このエラストマ-が著しい力学的異方性を示すことを初めて明らかにした。X線回析、透過型電子顕微鏡の測定からこのタンパク質中ではアラゴナイトの棒状結晶が一軸配向していることが明らかにされた。このような制御された結晶の生長は、タンパク質の異方性の場によってもたらされるものと推測した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Katsumichi Ono: "The Correlation Between Structure Formation and Kinetics of Vulcanization in Elastomers" J.Appl.Polymer Sci.:Applied Polymer Symposium. 44. (1989)
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[Publications] Katsumichi Ono: "Elastic Anisotropy of Bivalve Hinge-Ligament" J.Biomechanics. 22. (1989)