1988 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質の立体構造形成機構の研究:プロソン残基の役割について
Project/Area Number |
63470140
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
油谷 克英 大阪大学, 蛋白質研究所, 助手 (90089889)
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Keywords | スロップドフロー / トリプトファン合成酵素αーサブユニット / アミノ酸置換 / 蛋白質の構造形成 / CDスペクトル |
Research Abstract |
蛋白質のアミノ酸配列(一次構造)に依存した立体構造形成の機構は蛋白質化学の基本問題である。この機構を解明するためには、蛋白質の立体構造の安定化(平衡論的安定性と速度論的安定性)および立体構造形成過程に果している個々のアミノ酸残基の役割を把握し、それらを正確に定量化することが必須である。本研究計画では、トリプトファン合成酵素αーサブユニットのプロリン残基に注目し、プロリン残基の構造形成と安定性に果たす役割を解明しようとしている。本年度の結果は 1)10種のバクテリアで保存されている6個のプロリン残基(28、57、62、96、132、及び207位)をそれぞれアラニン及びグリシンに置換した12種のトリプトンファン合成酵素αーサブユニット変異型をsite-directed mutagenesisの方法で作製し、それらの菌を培養し、純度の高い蛋白質に精製した。但し、96位のグリシンへの置換型は安定性が著しく低下し、精製蛋白質を得られなかった。 2)得られた変異型の近紫外部(250ー320nm)におけるCDスペクトル(Jasco J500)を測定したところ、いずれの変異型も野生型のスペクトルとほとんど変化しなかった。しかし、207位のアラニン置換型及び測定可能であったグリシン置換型の遠紫外部のCDスペクトルは野生型に比して減少していた。このことは、ヘリックス破戒残基として知られているプロリンがヘリックス構造の安定化に寄与していると言う重要な知見を示している。 3)得た変異型の立体構造の安定性はカロリメータ(DASM4型)で測定した。全ての変異型が野生型より安定性を低下させていた。 4)本研究計画の主な経費はストップドフロー蛍光光度計(大塚電子KK)の購入に当てられた。初期調整が終わり、まず、野生型に関して塩酸グアニジン変性反応とその復元反応の測定が始められた。
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[Publications] Matsumura,M.;et al.: Eur.J.Biochem.171. 715-720 (1988)
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[Publications] Miles,E.W.;et al.: J.Biol.Chem.263. 8611-8614 (1988)
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[Publications] Kato,A.;et al.: Protein Engineering. 2. 153-156 (1988)
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[Publications] 油谷克英: 細胞工学. 7. 565-571 (1988)