1988 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解紫外共鳴ラマン分光法によるタンパク質の動的構造の解析
Project/Area Number |
63470141
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
北川 禎三 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (40029955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小倉 尚志 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (70183770)
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Keywords | 紫外共鳴ラマン / 時間分解ラマン / ヘモグロビン / 4次構造変化 / タンパク質の動的構造 |
Research Abstract |
いろいろなタンパク質の静的構造がX線結晶解析により明らかにされ、分子の構造と機能を考える基礎を与えてきた。しかし機能の発現にはタンパク質のやわらかさが必須であり、動的構造の解明が重要である。振動スペクトルは分子構造に敏感で時間応答も早いため、反応中間体等の短寿命分子の構造研究に適しているが、感度が低くシグナルの選択性に問題があった。しかし紫外光を励起光とする共鳴ラマン散乱では、芳香族アミノ酸残基の分子振動を選択的に感度高く検出できることが明らかになってきた。本研究では10nsの時間分解能で200〜240nm励起の共鳴ラマン散乱を観測できる実験系をつくり、それで一酸化炭素ヘモグロビンの光解離に伴う4次構造変化を追跡した。Nd:YAGレーザーの4倍波を長さ1m、7.5気圧のH_2セルに入射してラマンシフトさせ、ペリンブロッカプリズムで218nmの光を単離して光源とした。ラマン散乱光は1.26mのシングル分光器で分散させた。分散には2400gr/mmの木口グラフィック回析格子を2次で用いた。COの光解離にはN_2レーザー励起の色素レーザーで419nmの光を発振させた。パルス発生器でNd:YAGレーザー点火時刻をN_2レーザーのそれよりマイクロ秒のオーダーで遅延させた。+1秒の遅延に対しては、Nd:YAGレーザーの可視光パルスを光解離に用い、遅延時間(△t)は光学的につくった。△tが-100μsと10nsのスペクトルは同じであったが、△t=10〜20μsのところからトリプトファンの878cm^<-1>のラマン線が883cm^<-1>にシフトし始め、また1003cm^<-1>のラマン線強度が減少した。これと同様の変化は、メトヘモグロビンへのIHP添加により再現することができた。したがって上に観測した時間変化はα1-β2界面にあるβ37トリプトファンが4次構造変化により状態変化するために現われたと考えるのが合理的である。COの光解離はフェムト秒で起こるが、それがサブユニット界面に伝達されるのに10μsかかることが明らかになった。
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[Publications] T.Ogura;T.Kitagawa: Review of Scientific Instruments. 59. 1316-1320 (1988)
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[Publications] K.Kamogawa;T.Funii;T.Kitagawa: Applied Spectroscopy. 42. 248-254 (1988)
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[Publications] A.L.Verma;K.Kimura;A.Nakamura;T.Yagi;H.Inokuchi;T.Kitagawa: Journal of American Chemical Society. 110. 6617-6623 (1988)
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[Publications] J.De Groot;R.E.Hester;S.Kaminaka;T.Kitagawa: Journal of P-ysical Chemistry. 92. 2044-2048 (1988)
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[Publications] T.Fujii;K.Kamogawa;T.Kitagawa: Chemical Rhysics Letters. 148. 17-20 (1988)
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[Publications] N.Kitajima;T.Koda;S.Hashimoto;T.Kitagawa;Y.Morooka: Journal of Chemical Society,Chemical Communications. 151-152 (1988)
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[Publications] 北川禎三A.T.Tu: "ラマン分光学入門" 化学同人, 1-203 (1988)