1988 Fiscal Year Annual Research Report
生化学的・遺伝学的父子判定によるニホンザルの繁殖戦略の研究
Project/Area Number |
63480006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 幸丸 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (20025349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松林 清明 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (50027497)
野澤 謙 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (40023387)
大沢 秀行 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60027498)
竹中 修 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (00093261)
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Keywords | 霊長類 / 遺伝学的父子判定 / 繁殖戦略 / DNAフィンガープリント / ミニサテライトDNA / 父系図 |
Research Abstract |
本研究ではこれまで多型を示す遺伝マーカーが少ないために判別が不可能であったニホンザルの父子関係をミニサテライトDNAの多型により判定し、これによって今まで不明だった群れの父系図を明らかにすることを目的としている。霊長類研究所放飼場の若桜グループ約60頭のニホンザルのうち、1975ー1988年に生まれて生存中の48頭を対象とした。これまでに42頭の父親を判定した結果、(1)4才以上のオス11頭のうち上位オトナオス3頭の間では順位が子供の数に反映されない、(2)オスは出自家系内のメスとの間には子どもをつくっておらず、インセスト回避の傾向が存在する一方で、父娘間や異母兄弟間でのインセストは避けられていない、(3)メスは複数のオスとの間に子どもをつくっており、永年にわたる固定した配偶関係は見られない、(4)オスは5才半の交尾期から子どもを残している、等の事実がわかった。また1987年10月から1988年2月までの交尾期に全個体の交尾行動を終日観察した。この行動記録と1988年春に生まれた子どもの父子判定からは、(5)年齢の近い個体と交尾する傾向がある、(6)オトナメスでは受精後の交尾回数は減るが、ワカメスは受精後も活発な交尾をする、(7)交尾回数や射精率は順位、年齢に影響されるが子どもの数とは相関しない、(8)とくにワカメスにおいては「交尾行動からの予想される父親すなわち交尾回数の多いオス」と「判定された実際の父親」は違っている、という結果が得られ、オス、メスとも年齢、順位によって異なった繁殖戦略をとっており、それが効果をあげて上位オスの妨害により交尾回数が少ないワカオスでも子どもを残していることが示唆された。今後、この方法を放飼場と違いオスの移出入のある野生群にも応用し、オスの生涯繁殖史の解明や、雌雄の社会行動の意味付けに役立てたい。なおこれらの成果は88年度霊長類学会、行動学会において公表し、他の動物群の研究者間にも大きな関心を呼び起こしている。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 井上美穂、竹中 修: 遺伝. 43. 40-41 (1989)
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[Publications] M.Inoue;A.Takenaka;S.Tanaka;R.Kominami;O.Takenaka: Nature. (1989)
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[Publications] Y.Sugiyama;et al.: Behavioral ecology and Sociobiology. (1989)
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[Publications] H.Ohwasa et al.: Primates. 43. 40-41 (1989)
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[Publications] F.Mitsunaga;et al.: Primates. 43. 40-41 (1989)