1988 Fiscal Year Annual Research Report
害虫の不妊化機構ならびに精子競争に関する研究:配偶行動を利用した防除法と関連して
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63480040
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 嘉昭 名古屋大学, 農学部, 教授 (50115531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
椿 宜高 名古屋大学, 農学部, 助手 (30108641)
桜井 宏紀 岐阜大学, 農学部, 教授 (50022827)
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Keywords | 不妊化法 / 放射線照射 / 精子形成 / 精子競争 / ウリミバエ / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
研究の1年目として、伊藤と椿は沖繩におもむき、沖繩県ミバエ対策事業所の研究者と共同で、ウリミバエの正常雌に正常雄、不妊雄、精子を使い果した消耗不妊雄を交互に交尾させ、精子競争の実態を調査した。その結果、(1)ウリミバエは一晩交尾しているが、交尾時間が短いと精子優占度が低下するのでこの長時間交尾は精子優占度確保のためであること、(2)不妊雄の精子は正常雄のそれより精子競争力が弱いこと、(3)2回交尾した場合、あとで交尾した雄の精子がやや優占すること、(4)精子のなくなった不妊雄では卵のふ化率が低下しないこと、(5)しかし精子のない不妊雄との交尾によっても精子のある不妊雄および正常雄との交尾同様、雌の再交尾が抑制されることが明らかになった。 また桜井は不妊雄と正常雄およびそれらと交尾した雌を解剖し、光学顕微鏡と電子顕微鏡で精子を観察した。その結果、放射線照射はただ精子に優性致死突然変異をおこさせるだけでなく、精子を高率で奇型にすることもわかった。これにより、優性致死突然変異を持つ精子の受精による卵の死という、従来考えられた昆虫不妊化機構のほかに、無精子精液によって受精のう内の精子密度を低下させ、さらに雌の再交尾を阻止するという機構も働らいている可能性が示唆された。しかし前述の精子競争実験の結果は、突然変異精子も機能していることを示しており、2年目の課題は量的な研究によって上記二つの不妊化機構のどちらが重要であるかを示すことであると結論された。 なお不妊虫を用いての精子競争の研究は放射線の害という問題がつきまとう。このため伊藤は沖繩の研究者とともに、赤眼突然変異体を用いた精子競争の研究も開始した。両者の比較により一層問題が明らかになることが期待できる。
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[Publications] Tsubaki,Y.;Y.Sokei: Researches on Population Ecology. 30. 343-352 (1988)
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[Publications] Ito,Y.;M.Yamagishi: Applied Entomology and Zoology.
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[Publications] Yamagishi,M.;Y.Ito: Applied Entomology and Zoology.