1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63480048
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
和久 義夫 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (70027853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 泰久 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (50176806)
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Keywords | 成虫原基 / 神経発生 / 細胞の分化 / 細胞培養 / 家蚕 |
Research Abstract |
1.触角の神経発生の基礎的データを得る目的で、5ーブロモー2′ージオキシウリジンの核内とりこみを検出する細胞化学的手法により、幼虫頭部内に存在する成虫触角原基細胞の増殖分化過程を調べた。原基細胞は幼虫期に盛んに増殖するが、これはほとんど分化を伴わず、ほぼ均質な細胞の増加に留っている。原基組織は多列上皮構造で、その表面にのみ分裂像が見られるので、脊椎動物胚の神経管と同様な機構により細胞増殖を行うと思われる。蛹化前に増殖は停止し、代って原基組織構成細胞の「並べ変え」によって原基表面積が急激に増大し、蛹触角が形成される。神経細胞の質的な分化はこれにひきつづいておこる。すなわち蛹化前後を界として、細胞の増殖過程と分化過程の切り替えが生じる。 2.幼虫の触角原基を摘出し、これを細断して組織片とするか又は酵素処理により組織を解離して、原基細胞のin vitroでの培養を行った。培養液はGrace液やMGM448液などを用いた。培養期間は10ケ月以上に及んだ。組織片や細胞塊から出発した流出細胞は、種々の形式により増殖・組織化した。これらの細胞は袋状や扁平な組織を形成したり、または分散したままで増殖した。その中には数種の細胞があり、その1つからは培養中に明らかに神経細胞と思われるものが分化して来たので、この細胞は神経芽細胞と考えられた。神経細胞は多極性の長い突起を生じ、その形を変化させながら1ケ月以上生存した。生体の触角原基は変態時に多数の神経細胞を分化させるが、この過程が培養条件下でも再現しうることが明らかになった。由来の確実な原基組織から培養下で神経細胞を得た研究例は、まだ報告がない。上記のように、原基細胞は培養下である程度増殖したが、まだ細胞系として確立されるには至っていないので、今後の研究はこれを目標としたい。さらに、培養状態での神経細胞分化の好適条件をも追及する予定である。
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