1988 Fiscal Year Annual Research Report
塩類ストレスに対する植物の反応と適応機構に関する生理生化学的研究
Project/Area Number |
63480052
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
河崎 利夫 岡山大学, 資源生物科学研究所, 教授 (90033109)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森次 益三 岡山大学, 資源生物科学研究所, 助手 (80033116)
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Keywords | オオムギ / アツケシソウ / カルシウム / カリウム / ナトリウム / 塩素 / イオンの吸収・移行 / 給塩機構 |
Research Abstract |
中性植物であるオオムギ(Hordeum vulgare L.)と塩性植物であるアツケシソウ(Salicornia virginica L.)の切断根を用い、マルチコンパートメント・トランスポートボックス法により、塩化ナトリウム(NaCl)高濃度条件下での各種イオンの吸収と移行について検討した。 その結果、オオムギ切断根では、NaClの外液濃度の上昇とともにナトリウム(Na)の吸収・移行は増加した。カリウム(K)の吸収・移行はNaClの高濃度条件において顕着に減少した。しかし、NaClによるKの吸収・移行に対する抑制効果はカルシウム(Ca)の添加によって軽減される傾向が認められた。NaCl1mMの条件で硫酸ナトリウム(Na_2SO_4)の濃度を上昇させたとき、Na_2SO_4が50mMではClの吸収・移行は増加したが、Na_2SO_4が150mMではClの吸収・移行は低下した。また、Clの吸収・移行はCa濃度の上昇とともに増加する傾向があった。 他方、アツケシソウ切断根では、NaClの外液濃度の上昇とともにNaの吸収・移行は増加した。Kの吸収・移行は、Ca無添加の場合には、NaClの濃度上昇とともに顕着に低下した。しかし、Ca0.5および2.0mMの場合には、Kの吸収・移行はNaClの濃度上昇とともに増加した。Clの吸収・移行はオオムギ切断根の場合と同様な傾向を示したが、Ca2.0mMの場合には、Na_2SO_4が150mMでもClの吸収・移行は増加した。また、Clの吸収・移行は、特にNa_2SO_4が50あるいは150mMの場合に、Ca濃度の上昇によって増加する傾向があった。 以上のように、塩性植物アツケシソウ切断根では、一般に中性植物オオムギ切断根でのイオンの吸収・移行とよく似た傾向を示した。しかし、Ca添加条件においては、NaCl濃度の上昇によってKの吸収・移行が促進されるという特異な結果も見らた。これが塩性植物アツケシソウの耐塩機構の要因であるかどうかについて、さらに検討を進める。
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