1989 Fiscal Year Annual Research Report
魚類における組織適合性抗原の雌雄差および性判別への応用に関する研究
Project/Area Number |
63480069
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Research Institution | 東京水産大学 |
Principal Investigator |
尾城 隆 東京水産大学, 水産学部, 助教授 (10201401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
隆島 史夫 東京水産大学, 水産学部, 教授 (60041703)
岡本 信明 東京水産大学, 水産学部, 助教授 (40114912)
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Keywords | クロ-ン魚 / 性転換雄 / 組織適合性抗原 / 性特異タンパク質 / 性分化 |
Research Abstract |
前年度はギンブナC'G7604系統の人為的性転換雄に移植免疫学的特異抗原が誘導されたこと、また電気泳動法により数種の性特異タンパクが捉えられることを示した。本年度はそれらの抗原タンパクの精製、抗体作製に先立ち、当研究室の所有する他のギンブナ8系統を材料として、当該タンパクと性との関連性について再度吟味した。 1.鱗移植実験の再検討:系統によっては雌間の移植でも拒絶が起こり、また自然性転換雄の出現する系統の雌雄間では拒絶が起きないことが分かり、移植免疫学的に性特異抗原を検出することは不適当と判断された。 2.アイソザイム・パタ-ンの系統内均一性の検討:染色体間の乗換えなどで、諸臓器の泳動像に同腹仔内でも最高1.5%の変異が新たに生ずることが分かり、性特異タンパクの同定には注意を要すると考えられた。 3.未熟生殖腺中の雄特異抗原:C′G7604系統の性転換雄に出現した数種のタンパクは、いずれも、(a)他の全雌系統で、雌生殖腺にも見られるもの、(b)雄出現系統の雄生殖腺に見られないもの、のどちらかであった。従って、この中には目的とする雄特異抗原はないものと推定された。そこで分析システムの改良により検出感度を高めたところ、C'G7604系統において、性転換雄のみに見られる微量タンパクを新たに見いだしたので、現在その中から、他系統の雌には見られず、自然性転換雄に共通して見られるものを検索中である。 4.性転換雄精子に対する抗体の作製:性転換雄の精子を凝集させる同系統雌の抗精子血清は、キンギョ精子を凝集させないことから、近縁種間でも性特異抗原はかなり異なる可能性が示唆された。 以上、性特異抗原は組織適合性抗原とは必ずしも一致せず、その同定や抗体の作製には、超微量タンパクの分離・分析手法や組織中のmRNAの単離に始まる一連の遺伝子工学的手法の導入が将来は不可欠と思われる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 尾城隆,浪岡吉秋,隆島史夫: "天然雌性発生ギンブナの人為的性転換とその精子形成について" 魚類学雑誌.
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[Publications] 張峰,尾城隆,隆島史夫: "天然雌性発生ギンブナのクロ-ン性について" 日本水産学会誌.
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[Publications] 清水泰,尾島隆,隆島史夫: "天然雌性発生ギンブナの由来に関する研究" 日本水産学会誌または魚類学雑誌.
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[Publications] 尾城隆ほか(共著): "魚類の育種改良とバイオテクノロジ-(印刷中)" 成山堂, 300 (1990)
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[Publications] 尾城隆ほか(共著): "染色体工学による魚類の性および成熟の統御(印刷中)" 学会出版センタ-, (1990)