1990 Fiscal Year Annual Research Report
網膜における化学伝達物質放出機構に関する研究:Ca依存性放出とCa非依存性放出
Project/Area Number |
63480111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
立花 政夫 東京大学, 文学部, 助教授 (60132734)
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Keywords | 網膜 / 化学伝達物質 / カルシウムイオン / カルシウム電流 / シナプス / 神経細胞 / グルタミン酸 / アミノ酸 |
Research Abstract |
網膜第二次ニュ-ロンである双極細胞の化学伝達物質の候補としてグルタミン酸があげられている。そこで、双極細胞の脱分極によりグルタミン酸が放出されるか否かを検討した。タンパク質分解酵素をキンギョ網膜に作用させてON型双極細胞を単離した。また、同様に、アメリカナマズの網膜から水平細胞を単離し、グルタミン酸を検出するのに用いた。双極細胞と水平細胞を密着させた状態で、各細胞をパッチ電極で膜電位固定(wholeーcell clamp)した。双極細胞を脱分極させると、水平細胞に応答(保持電位+40mVの時、応答の振幅約20pAの外向き電流)が発生した。この応答は両細胞間の距離を離すと消失したので、双極細胞から放出された物質によって引き起こされたと考えられる。水平細胞の応答の性質を調べると、(1)反転電位は約0mVであること、(2)陽イオン透過性の増大によって生じること、(3)J字型の非線形な膜電位依存性を示すこと、(4)グリシンにより増強されること、(5)グルタミン酸アンタゴニストにより阻害されることが判明した。これらの性質は、水平細胞のNMDA受容体がグルタミン酸によって活性化されて発生する応答の性質に一致していた。したがって、双極細胞は脱分極によってグルタミン酸あるいはその類似物質を放出すると結論した。次に、双極細胞からの放出がCa依存性であるか否かを検討した。双極細胞の脱分極によって活性化されるCa電流をCdイオンなどで阻害すると、水平細胞の応答は消失した。また、双極細胞のCa電流と水平細胞の応答との関係は、上に凸な単調増加関数であった。したがって、双極細胞からのグルタミン酸様物質の放出はCa依存性であると結論した。現在、双極細胞へCaイオンが流入してからグルタミン酸様物質が放出されるまでの過程を、パッチクランプ法と細胞内Caイオン濃度測定法を適用して、詳細に検討している。
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[Publications] E.A.Schwartz: "Electrophysiology of glutamate and sodium coーtransport in a glial cell of the salamander retina." Journal of Physiology (London). 426. 43-80 (1990)
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[Publications] M.Tachibana: "Release of endogenous excitatory amino acids from ONーtype bipolar cells isolated from the goldfish retina." Journal of Neuroscience. (1991)