1989 Fiscal Year Annual Research Report
増殖因子としての膵分泌性トリプシン・インヒビタ-の産生とその受容体の構造解析
Project/Area Number |
63480135
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Research Institution | Osaka University Medical School |
Principal Investigator |
小川 道雄 大阪大学, 医学部, 助教授 (30028691)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮内 啓輔 大阪大学, 医学部, 助手 (70209857)
村田 厚夫 大阪大学, 医学部, 助手 (00200288)
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Keywords | 膵分泌性トリプシン・インヒビタ-(PSTI) / 培養細胞系 / PSTI受容体 |
Research Abstract |
PSTI受容体の構造を明らかにする目的で、ヒトPSTIをラクトペルオキシタ-ゼ法により標識し、細胞はマウス線維芽細胞である3T3Swiss albino細胞を24ーwell dishに静止状態まで培養したものを用いて実験を行った。PSTIの細胞に対する結合は4℃、120分で平衡状態に達した。細胞に結合したPSTIは、37℃、30分で細胞内に取込まれ(内部化)、時間経過と共に内部化された^<125>I-PSTIは崩壊し細胞外へ排除された。Ca^<2+>、Mg^<2+>存在下でPSTIの結合は抑制され、K^+、Na^+では変化がなかった。結合の至適pHは7.4ー8.0であった。^<125>I-PSTIを非標識のPSTIと共に細胞と反応させると、非標識PSTIは用量依存的に^<125>I-PSTIの結合を阻害した。他の成長因子であるEGF、b-FGF、IGF-1、TGFα、PDGF、TNFを添加しても、^<125>I-PSTIの結合は阻害されなかった。阻害反応曲線を用いてScatchard解析をしたところ、解離定数(Kd)は5.3×10^<-10>Mで、一細胞あたり5,400の結合部位が存在することがわかった。この結合部位は、解離曲線により負の協同性をもたないものであった。さらにこのPSTIに特異的に結合する蛋白を同定する目的で、2価の架橋試薬であるdissucinimidyl suberate(DSS)を用いて、cross-linking解析を行った。Autoradiographyで約140Kdの位置にバンドを認め、このバンドは非標識のPSTIで用量依存的に薄くなること、他の成長因子添加で消失しないことより、PSTI-PSTI受容体複合体であることが推測された。また種々のプロテア-ゼ・インヒビタ-で細胞表面のプロテア-ゼを阻害しても、結合活性には変化がみられなかった。
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[Publications] Horii A.,et al.: "On the cDNA's for two types of rat pancreatic secretory trypsin inhibitor." Biochem.Biophys.Res.Commun.162. 151-159 (1989)
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[Publications] Ueda G.,et al.: "Immunohistochemical demonstration of pancreatic secretory trypsin inhibitor in gynecologic tumors." Gynecol.Oncol.32. 37-40 (1989)
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[Publications] 小川道雄: "膵炎と膵分泌性トリプシンインヒビタ-" 代謝. 26. 1015-1024 (1989)
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[Publications] 小川道雄: "膵分泌性トリプシン・インヒビタ-(PSTI)" 検査と技術. 17. 396-397 (1989)
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[Publications] 小川道雄,他: "膵疾患と膵酵素ー特に膵癌マ-カ-としての血中膵酵素についてー" 臨床科学. 25. 606-615 (1989)
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[Publications] 安田直史,他: "侵襲に対する血中膵分泌性トリプシンインヒビタ-(PSTI)の増加機序の検討" 腫瘍と感染. 2(12). 905-909 (1989)
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[Publications] 小川道雄: "感染・炎症とプロテア-ゼ・インヒビタ-" ICUとCCU. 14(1). 11-19 (1990)
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[Publications] 小川道雄: "異所性酵素産生腫瘍" BIOmedica. 5(3). 246-251 (1990)
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[Publications] Ogawa M.,et al.: "Intracellular Proteolysis:Biological functions of pancreatic secretory trypsin inhibitor expressed in various cancer tissues." Japan Sci.Soc.Press.Mechanisms and Regulations.,Katunuma N.,Kominami E.,eds., 519-526 (1989)
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[Publications] 小川道雄: "内科Mook39「膵癌」 膵癌マ-カ-としての血清酵素・酵素インヒビタ-" 金原出版,石井兼央編, 43-49 (1989)
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[Publications] 小川道雄: "「膵癌の診断と治療の進歩」血中膵酵素および酵素インヒビタ-による膵癌の診断ー膵癌患者における血中PSTI上昇とその意義ー" 医学図書出版,土屋涼一他編, 19-21 (1989)
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[Publications] 小川道雄: "「膵癌の診断と治療の進歩」膵癌の病態と早期診断に関する研究ー腫瘍組織の産生するPSTI構造と病態への影響についてー" 医学図書出版,土屋涼一他編, 22-24 (1989)